※写真はイメージ(gettyimages)
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 行動制限のない夏、帰省の準備をしている人も多いのでは。久々に顔を合わせるからこそ、いまのうちから一緒に考え、整えておくことで、お互いが安心できることがある。例えば「詐欺被害」。どうすれば防ぐことができるのか、専門家がアドバイスする。AERA 2022年8月15-22日合併号の記事から。

【年代別人口10万対の被害件数はこちら】

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 警察庁によると、2021年のオレオレ詐欺など特殊詐欺の認知件数は、1万4498件。4年ぶりに増加した。

 被害者の多くは高齢者だ。アンケート結果を見ても、実家に振り込め詐欺の電話がかかってくることなど、めずらしいことではなくなっているのが現状だ。

 なぜ、高齢者が被害者になりやすいのか。

 高齢者の金融リテラシーに詳しいパパラカ研究所の荒木宏子さん(慶應義塾大学経済研究所ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター招聘研究員)が注目するのは、行動経済学などの分野で「自信過剰バイアス」と呼ばれるものだ。「自分はだまされない」という思い込みが、リスクを高めるという。

「自分は詐欺被害に遭うかもしれないという意識のことを、詐欺脆弱性認知と言いますが、これが低い人、つまり自分はだまされないと思っている人のほうが詐欺に遭いやすいんです」

■ギャップが狙われる

 これは、警察庁が18年にオレオレ詐欺の被害者を対象に行った調査でも明らかになっている。調査では被害者の78.2%が「自分は被害に遭わないと思っていた」と回答。「どちらかと言えば自分は被害に遭わないと思っていた」の回答も合わせれば、95.2%にも上る。一方、詐欺の電話等を受けたものの自ら看破した人たちの場合、「自分は被害に遭わないと思っていた」割合は56.8%にとどまった。

「各国の研究によれば、金融リテラシーは50~60代をピークにその後低下する、逆U字形を描くことが知られています。一方で、金融リテラシーに対する自己評価は加齢によって落ちません。私が日本のデータ(金融広報中央委員会「金融リテラシー調査」を用いた分析結果)を用いて推計した研究でも、客観的なリテラシースコアよりも自己評価が高い自信過剰者の割合は70代で増加します」

 このギャップが狙われるのだと荒木さんは説明する。自分の能力に対して健全な疑いを持つことが、詐欺被害を防ぐ上では重要な役割を果たす。

 荒木さんはさらに、自己看破できた人たちは、被害に遭った人と比べ、電話を受けた後に人と相談した割合が高い点にも注目する。

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