増上寺を出る安倍晋三元首相の棺(ひつぎ)を乗せた車=7月12日午後、東京都港区、朝日新聞社ヘリから
増上寺を出る安倍晋三元首相の棺(ひつぎ)を乗せた車=7月12日午後、東京都港区、朝日新聞社ヘリから

 安倍元首相の訃報を受け、ローソン社長の竹増貞信氏が、弔意を表した。

 安倍晋三元総理がお亡くなりになりました。事件のあった先週金曜日、私は前日から行われていた経済同友会の夏季セミナーで軽井沢にいました。最初に銃撃されたという一報を聞いたときは、耳を疑いました。そんなことが、この日本で本当に起こるのか。何かの間違いであってほしい、と。命を落とされたと聞いたときは本当にショックでした。許しがたい蛮行に対し、激しい怒りを感じています。

 個人的に思い出すのは、気さくで魅力的なお人柄です。2012年12月に第二次安倍政権ができて以降、安倍さんは「経済をさらに成長させていく」という強いメッセージを出されました。経済界への働きかけも強く、その一環として安倍さんが外遊されるときには経済界の人間も同行して先方の国の経済界と交流するということもあり、当時三菱商事で小林健社長の秘書をしていた私にもその機会がありました。

 東南アジアや、14年1月の「オマーン及びアフリカ諸国訪問」にも同行しました。最初はコートジボワールのアビジャンで安倍さんをお待ちして、モザンビークのマプトからエチオピアのアジスアベバへ。私たちも政府専用機に乗せていただいて移動するのですが、そんなときに安倍さんは、私たち経済人や事務方の人間にもとても気遣いのある方でした。目まぐるしい日程の中、記念撮影をする際には私などにも気さくに「ご一緒にどうぞ」と声をかけてくださったり。現場の一人ひとりを大事にされるお人柄に感銘を受けました。

 その姿は、コロナ禍になってすぐの2020年当初に私たちエッセンシャルワーカーの現場で何が起きているのか、どんなことで現場は困っているのかを、官邸に呼んでいただいてお話しする機会をくださったことにもつながります。非常に「現場を大事にしてくださる」方だったんです。

著者プロフィールを見る
竹増貞信

竹増貞信

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

竹増貞信の記事一覧はこちら
次のページ
経済の活性化にも「強い信念」