夫 小林英健 [63]近畿医療学園・専門学校 理事長 柔道整復師

こばやし・ひでたけ◆1958年、奈良県生まれ。82年、関西大学卒業後、地方銀行に就職。83年に柔道整復師を目指して専門学校へ。85年に独立開業。2008年に「近畿医療専門学校」を開校。16年、リオデジャネイロオリンピックに日本選手団のトレーナーとして派遣される

 銀行に入って数日で「間違った」と思いました(笑)。自分にとって生きがいと思える仕事ではなかったんです。そんなとき営業で出会った整骨院の先生が「この仕事は人から感謝される素晴らしい仕事だ」と。「これだ!」と思いました。新婚早々学生に逆戻りしたけれど、妻は生活費の面倒も見てくれました。

 整骨院開業後も研究を重ねて独自の施術を生み出し、プロ野球選手などアスリートも施術をするようになった。充実感でいっぱいのとき、妻に言われたんです。「あなたは『先生』と呼ばれて必要とされている。でも私は『受け付けの人』で『院長先生の奥さん』。ここは私の居場所じゃない」

 僕は当時、膝痛や腰痛で苦しむ患者さんの多くが生活習慣病を患っている状況を知り、体全体を整える必要性を感じていた。そこで妻に健康のカウンセリングをしてもらったんです。妻はそこに居場所を見つけたようです。医療専門学校の立ち上げも支えてくれました。40年の道のりに感謝しかありません。

(構成・中村千晶)

AERA 2022年4月18日号