AERA 2022年3月28日号より
AERA 2022年3月28日号より

 ウクライナに侵攻するロシアに対し、欧米諸国が経済制裁を強化している。企業も次々とロシアとの事業を停止や撤退を表明している。国際社会からの締め出しにより孤立を深めるロシアと今後どう向きあうべきか。AERA 2022年3月28日号の記事から紹介する。

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 経済制裁によって、ロシアは国際的に孤立を深めている。そう言われることも多い。3月2日の国連総会緊急特別会合ではロシア非難決議が141カ国の支持で可決された。だが、反対も5カ国、無投票12カ国、棄権は35カ国にのぼった。それをどう見たらよいのか。

 ロシアに詳しい広島市立大専任講師(国際関係論)の加藤美保子さんは、とくに「棄権」をした国々について、「どちらの側にも立たない。苦しい立場が透けて見える」と指摘する。

「中国はロシアと戦略的パートナーシップを結んでいますが、同盟ではないので軍事的な協力には限界があるし、欧米との全面対立には巻き込まれたくない。一方で米国に一国で対峙(たいじ)するよりはロシアと安全保障面で協力はしたい。そういう論理だと思います。インドは旧ソ連時代からの友好国で戦略的パートナー。ロシアの最大の武器輸出先で、インドも武器装備の約7割はロシア製で賄っています。そういう背景もあるでしょう」

 他の国も背景は様々だ。イランはロシアとともにシリアのアサド政権を支持することで中東の平和を維持し、イスラム国やアルカイダに対抗する点でも立場が一致する。旧ソ連のアルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンは集団安全保障条約機構(CSTO、ロシアが主導する軍事同盟)の加盟国だ。

「アルジェリア、マリは武器購入や軍事支援の面でロシアとつながりがあったり、モンゴルはプーチンが中国の一帯一路に対抗して掲げた『大ユーラシア・パートナーシップ』構想を支持していたり。パキスタンは隣国アフガニスタン情勢の安定化のため、ロシア主導で行われる『拡大トロイカ』および『モスクワ方式』と呼ばれる多国間協議に加わっていることが背景として考えられます」(加藤さん)

 ロシアはソ連崩壊後の1990年代半ば、国際的な孤立に苦しんだ時期がある。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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