食糧問題に発展しそう
物流も動かない。欧州の窓であるロシア・サンクトペテルブルク港ではコンテナ船の入港拒否が広がる。ロシアとウクライナが面する黒海の港では物流がすでに麻痺(まひ)状態だ。服部さんはこの状況を「食糧上の大問題につながる」と警鐘を鳴らす。
「黒海に面したロシアのノヴォロシースク港は、穀物を輸出する最大の港です。そこから地中海を通って北アフリカや中近東が主要販路でしたが、いまは小麦の積み出しなどできない状況でしょう。2010年にはロシアの干ばつによる小麦の供給不足で中東や北アフリカで食糧価格が上がり、『アラブの春』の遠因になったと言われます。その再来にもなりかねません」
ロシア航空局によるロシア領空の飛行禁止措置で、日本と欧州を結ぶ便は大回りを余儀なくされている。さらにノルウェー産のサーモンが日本に入ってこないなどの影響も出ている。
日本への影響は他にもある。ロシア、ウクライナ産の小麦は食用としてはほとんど日本には輸入されていないが、国際的な小麦の需給逼迫(ひっぱく)で価格が上がれば、他国産の小麦の価格も上がる。服部さんはこうも話す。
「ロシアはスケトウダラの漁獲が多く、その卵(助子)がめんたいことして日本に流通しています。またカニやウニなどもロシアからの輸入割合が高い。今後、決済がうまくいかなくなったとき、それらが安定的に供給されるか、不安はあります」
さまざまな反作用も生んでいる経済制裁。もはやこれは「プーチン対人類」というレベルの問題だと服部さんは言う。
「プーチン政権のウクライナでの蛮行を見れば、欧米も日本も、その体制を打倒するところまで意図し、経済的な措置はすべてやると。その決意の表れだと私は理解しています」
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2022年3月28日号より抜粋