鍵山の特徴は、父でありコーチの正和氏のもと、幼少期から徹底してきた基礎のスケーティングだ。力を使わずにトップスピードに入っていく、“つるつる”した滑りは秀逸である。

 全日本選手権では、ショートでミスがあり3位発進。フリーは3本の4回転を降りて2位、総合は銅メダルだった。

「今季は苦しい演技が続いていたので、このフリーは最後まで諦めない姿を見せることができました。五輪選考会という舞台で、周りの期待も背負っていたので、終わったらほっとして涙が出ちゃいました」

■父を超えて親孝行する

 正月明け以降は、4回転ループの練習を再開。五輪のフリーで組み込む予定だ。「やっと自分らしいジャンプが跳べるようになってきました。この調子なら入れられると思います。最初は確実に跳べる4回転サルコウを決めて、それから4回転ループを跳びたいと思います」

 目標は2度の五輪出場者である父だ。「お父さんより良い結果を残して、親孝行というか感動させられる演技をできたらいいなと思います」

ヴィンセント・ジョウ(21)Vincent Zhou/米国代表。今季一番の成長株。スケートアメリカではチェン、宇野を抑えて優勝した。4回転ルッツと4回転フリップを武器にする
ヴィンセント・ジョウ(21)Vincent Zhou/米国代表。今季一番の成長株。スケートアメリカではチェン、宇野を抑えて優勝した。4回転ルッツと4回転フリップを武器にする

 ジョウの存在も侮れない。4回転ルッツと4回転フリップを武器にするジャンパー。全米選手権のショートでは、パーフェクトの演技で2位。フリーはミスを連発しながらも、総合3位に踏みとどまった。大技を詰め込んでいるぶん波があるが、自己ベストは299.01点と、力がある。平昌ではショートのミスで出遅れたが、フリーで挽回(ばんかい)して6位につけた。リベンジとなる2度目の五輪で、成長した姿を見せたい。

 誰が北京の頂点に立つのか。2月10日、その運命が決まる。(ライター・野口美恵)

AERA 2022年2月7日号より
AERA 2022年2月7日号より


AERA 2022年2月7日号より抜粋