廻転鮨 銀座おのでら本店/イカ釣り船の明かりをモチーフにしたライトがつるされた店内。職人の手さばきも高級店の雰囲気が漂う(photo 写真部・高野楓菜)
廻転鮨 銀座おのでら本店/イカ釣り船の明かりをモチーフにしたライトがつるされた店内。職人の手さばきも高級店の雰囲気が漂う(photo 写真部・高野楓菜)

 日本のファッションの中心地、東京・表参道と原宿。隣り合ったその街がいま、回転ずしの激戦区になっている。その「おいしい理由」とは──。AERA 2022年1月24日号の記事を紹介する。

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 ファッションブランドが連なる表参道。メイン通りから10メートルほど入った一角に、昨年10月オープンしたのが「廻転鮨(かいてんすし) 銀座おのでら本店」だ。

 本家の「鮨 銀座おのでら」は米ニューヨークやロサンゼルスにも店を構え、グループ3店が「ミシュランガイド」の星を獲得した高級店だ。そんなセレブをうならせる名店が培ってきた“本格江戸前ずし”のクオリティーを、誰もが親しみやすい回転ずしのスタイルで楽しんでもらおうと表参道に出店した。

 店内は、回転ずしとは思えないゴージャスな雰囲気が漂う。イカ釣り船の明かりをモチーフにしたライトがつるされた天井には、滑らかな凹凸加工を施した金属がはめられている。なぎの波をイメージし、ハンドメイドで仕上げたという。

高級店の味が気軽に

 夕暮れ時の海をイメージした壁は、上から下に微妙に色調が変化するオレンジのグラデーションで彩られている。店内には「立ち食い」のカウンターも併設している。内装は豪華だが、庶民的ともいえる。

 ONODERAフードサービスの長尾真司社長は、客層を広げる狙いがあったと明かす。

「高級店だとコース料理が一般的です。うちが回転ずしと名乗らずレーンのないお店で出店していたら、たぶん入りづらいお客様もいたと思います。でも、回転ずしや立ち食いというスタイルで提供すれば、うちのすしを1貫から気軽に食べていただくことができます。回転ずしというジャンルで出店したことで、様々な方にお店に足を運んでいただける、今の状況があるのかなと思っています」

 銀座の店は接待でもよく使われる。コロナ禍でそうした需要が減るなか、ファミリー層を含む新たな顧客獲得の場として、「回転ずし」は有効なのだ。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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