米ツイッターの創業者、ジャック・ドーシー氏。ツイッターのCEO職を辞め、仮想通貨の事業に集中するという(写真:gettyimages)
米ツイッターの創業者、ジャック・ドーシー氏。ツイッターのCEO職を辞め、仮想通貨の事業に集中するという(写真:gettyimages)

 内部告発で批判にさらされる米フェイスブック(FB)が社名をメタに変えた。仮想空間「メタバース」に集中するためという。ツイッターの創業者は暗号資産(仮想通貨)に舵を切る。SNSはどこへ向かうのか。AERA 2022年1月17日号から。

【写真】米フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏

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 FBは21年10月下旬には、社名をFBから「メタ」に変え、「メタバース」と呼ばれる仮想空間分野に会社を挙げて注力する考えを鮮明にした。同社は昨年、メタバースに100億ドル(約1.2兆円)規模を投資するとして、その後数年で投資を増やす方針も示した。将来は「数十億人が、デジタル上で数千億ドルの買い物をする場になる」と壮大な構想を掲げる。

 マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は社名変更を発表したオンラインイベントで訴えた。

「様々な調査や議論がある中で、なぜ今こんなことをするのかと思う人もいるだろう。答えは、テクノロジーが我々の生活を良くしてくれると信じているからだ」

 FBは04年、米ハーバード大学の学生だったザッカーバーグ氏らが学生寮で立ち上げた。使命として掲げたのは、利用者の友人や家族などとのつながりを通じて、「人々にコミュニティーを作る力を与え、世界をより近いものにする」というものだ。

■「アラブの春」の原動力が民主主義の「危機招く」

 米ジャーナリスト、デビッド・カークパトリック氏の著書『フェイスブック 若き天才の野望』の冒頭では、08年に南米コロンビアの一人の若者が、左翼ゲリラ・コロンビア革命軍(FARC)に反対するグループをFB上で作ったエピソードが紹介されている。1カ月後に呼びかけたデモ行進に、コロンビア国内で1千万人、東京も含めた世界の主要都市で200万人が参加するデモ行進につながったとされる。

 11年には、チュニジアの民主化運動を皮切りに広がった「アラブの春」で若者が軍政に対抗する手段として使われるなど、強権的な国家で抑圧された民衆に、民主主義を後押しする強力なツールとしての期待が高まった。ザッカーバーグ氏は10年、米タイム誌の「今年の人」に選ばれている。

 FBの特徴は「実名」によるSNSという点だ。匿名の投稿が多かったネット空間で、実名主義で得られる利用者の詳細なデータをもとに、広告収益につなげていった。

 だがその後は、SNSのポジティブな効果よりも、むしろ民主主義をゆがめる「副作用」のほうが目立つようになってくる。

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