介護の技能実習生を受け入れる国内最大手の監理団体「医療介護ネットワーク協同組合」(東京都港区)の増村章仁理事長がこう説明する。

「介護事業者の収入は、利用者に提供した介護サービスの対価として市町村から支払われる介護報酬になりますが、介護報酬を得るには、3人の入居者に対し常勤で1人といった人員配置基準があります。人員基準を派遣社員で補う事業者が多かったですが、コストの高さや定着率の悪さから、外国人労働者に切り替える事業者が増えています」

 受け入れ施設の種類別の統計はないが、特別養護老人ホームの受け入れが大半で、ほかには老健や障害者施設での受け入れが見られるという。

 また、特定技能外国人は国際貢献を目的とした技能実習生と違い、受け入れ側のメリットが大きい。日本人同様に1年目から人員基準の職員としてカウントされ、夜勤にも就かせられるが、増村理事長は「まずは実習生として入国させ、3年後に特定技能に移行する流れが定着するのではないか」と指摘する。技能実習制度では転職が認められないことなどを理由に国内外から「奴隷労働」などと批判を受けたことから、特定技能では転職が認められ、地方は厳しい現実に置かれる。

 鹿児島県のある監理団体では、約100人の介護の技能実習生を監理している。同団体幹部が本音を話す。

「実習生の9割近くは、3年間の技能実習が終わり次第、特定技能に移行して、都会の施設に転職したいと話しています。都会への憧れもあるでしょうが、最低賃金がベースとなる彼らにとって、賃金の高い都市部は魅力です。技能実習制度で受け入れのハードルは下がりましたが、特定技能により地方の人手確保は難しくなります」

 また、人材の送り出し国にも「変化が出てくるだろう」とこの幹部は話す。21年6月末時点で、国内に在留する技能実習生は約35万4千人。そのうち、ベトナム人が過半の約20万2千人を占めるが、介護業界では他国の実習生を求める動きが強い。前出の幹部は、

「元実習生などから日本の情報が蓄積され、求める賃金水準も高くなり、特に最低賃金の低い地方ではベトナム人を募集しても人が集まりづらい」

(ジャーナリスト・澤田晃宏)

AERA 2022年1月3日-1月10日合併号より抜粋