介護福祉士養成施設への入学者数と外国人留学生(AERA 2022年1月3日-10日合併号より)
介護福祉士養成施設への入学者数と外国人留学生(AERA 2022年1月3日-10日合併号より)

■外国人介護職員の在留資格が乱立

 専門学校や短期大学などの介護福祉士養成施設の定員充足率はここ数年、大きく定員割れしていたが、留学生の急激な増加により、20年度に5割を超えた。何故なのか。

 政府は17年に介護福祉士の資格取得者を対象とした在留資格「介護」を新設。在留期限がないことから外国人の注目を集め、介護事業者も国の奨学金の利用を促したり、独自の奨学金を創設したりして、介護福祉士養成施設への入学者を増やしているのだ。

 政府は、介護福祉士養成施設等の在学期間中に月額5万円以内の学費を貸し付け、貸し付けを受けた都道府県で5年間、継続して福祉・介護の仕事に就いた学生の奨学金返還を免除する制度を設けている。入学時、卒業時には20万円以内の準備金も貸し付ける。

 同制度は日本人を対象に創設されたが、留学生の利用者は介護の在留資格が創設された17年の47人から、20年には1710人にまで増加。留学生の増加により、受け入れ施設が留学生に給付する奨学金等を都道府県が補助する制度も18年度からスタートしている。

 ただ、留学生がいくら増えても、圧倒的な人手不足の前には焼け石に水だ。政府は17年に「技能実習制度」の対象職種に介護を追加した。在留期間は最大5年。技能実習の対象職種の大半は非対人型の作業だが、介護は人を相手にする仕事だ。そのため、入国時に基本的な日本語を理解できる日本語レベル「N4」の取得を求めるなど、他業種にはない要件はあるが、受け入れのハードルが圧倒的に下がった。

■特定技能14業種のうち介護は6万人で最多

 19年には、実態は人手不足の現場の人材確保にもかかわらず、途上国への知識と技能移転による「国際貢献」を目的とする技能実習制度への批判もあり、国は初めて正面から海外の出稼ぎ労働者の受け入れを認める在留資格「特定技能」を新設。5年で約34万5千人の受け入れを目指し、対象となる14業種のうち、介護は6万人と最多だ。

 最長5年の特定技能の在留資格を得るには、日本語の試験(N4相当)と介護分野に特化した日本語試験に加え、介護技能評価試験があるが、母国語で受けられる上、難易度も介護福祉士試験に比べれば「小学生のテストと大学受験くらい違う」(介護関係者)。技能実習生として3年間働けば、無試験で特定技能に移行することもできる。

 受け入れのハードルが下がる背景には、即戦力ではなくとも、とにかく人手が必要な介護現場の実情がある。

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