「でも、ここで死ぬと入管が喜ぶ。私の居場所は日本しかない。だから、頑張って仮放免になるまで耐えた」

 精神的なダメージは、仮放免となり、収容施設から出てからも続く人が多い。

1年8カ月近く東京入管(東京都港区)に収容されていたクルド人男性のフセインさん(40代)さんは、仮放免から2年近くたつ今も様々な症状に苦しめられる。

「眠れない、何もする気にならない。落ち込んだり、物忘れも多くなったりした」

 収容中に食事を取らず栄養不足になったせいか、目が悪くなり、チカチカしたりするようになった。今も精神科に通院し、睡眠導入剤や精神安定剤などの薬が手放せないという。

 仮放免者は通常、2カ月に1度、入管に呼び出されて更新手続きをする。この間、コロナ禍で呼び出しはストップしていたが、再開されるようになった。呼び出されて出頭すると、難民申請を取り下げられそのまま収容される可能性もある。

 フセインさんには日本で結婚した妻(30代)と、幼い子どもが2人いる。収容されれば、家族と会えないばかりか、トルコに強制送還される危険性もある。

 再収容されるかもしれないことをどう思っているかと聞くと、

「怖いよ」

 そう言うと、押し黙った。(編集部・野村昌二)

AERA 2021年12月20日号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら