10月26日、都内ホテルで結婚の記者会見を行った小室眞子さんと圭さん (c)朝日新聞社
10月26日、都内ホテルで結婚の記者会見を行った小室眞子さんと圭さん (c)朝日新聞社

 宮内庁から公開される公式映像は、公式会見やおことば、園遊会を除けば、なぜか音声がない。皇族の肉声を聞く機会の少なさが、国民とのディスコミュニケーションに拍車をかけた可能性がある。AERA 2021年11月15日号から。

【写真】生後9カ月の眞子さんを抱く紀子さま

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 皇族の肉声不足が、もたらすものは何か。眞子さん結婚会見にも批判的な声が多くあったことに、「肉声が伝えられていない」デメリットが表れたと指摘するのは、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんだ。

「映像に音という非言語情報が入ると、映像を作る側が意図しないことも発信してしまうので、宮内庁としては皇族映像に音を入れない方が『印象管理』しやすいのは確かだと思います」

 たとえば、皇族がいかに特別な存在で、国民に寄り添うすばらしい人格者で──という映像に宮内庁がしたいとすれば、音は入れないほうがいい。問題はそれを見た国民の側の「期待値が上がりすぎる」危険があることだと、藤田さんは言う。

「勝手に理想像を作り上げてしまい、眞子さんへの認知に歪みが生じやすくなる。会見で初めて肉声を聞き、認知とのギャップに驚き、『思っていたのと違う!』となってしまうんです」

 歴史学者で名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんも、眞子さんの件は、国民と皇室のある種のディスコミュニケーションだったとして、こう指摘する。

「彼らの考えや生身の人間としての喜怒哀楽を聞ける機会がもっとあれば、『こういう人なんだから』とある意味、耐性ができる。それを知らないから、結婚のことも『いきなり言われた』となってしまうのでしょう。皇族の肉声が国民にもっと響くことが、必要かなと思いますね」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2021年11月15日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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