目がしょぼしょぼして点眼薬を差すときも注意が必要だ(撮影/写真部・張溢文)
目がしょぼしょぼして点眼薬を差すときも注意が必要だ(撮影/写真部・張溢文)

「VDT作業(パソコンなどの作業)に集中すると、通常1分間に20回程度のまばたきの回数が、1分間に5回程度に減少します。目を開けている時間が長くなるので涙の量が少なくなり、目が乾きやすくなります。つまり、ドライアイを起こしやすくなります」

 すると、目の表面を覆う角膜がむき出しに近い状態になる。傷つきやすくなり、さまざまな症状が現れる。文字がぼやける、目が常に乾いてしょぼしょぼする、目がかすむ、痛む、ゴロゴロする、寝ても疲れ目が取れない、充血、光が眩しい……などだ。

■マスクでドライアイ

 さらに堀教授が問題視するのは、マスクによるドライアイだ。吐いた息がマスクの上部から漏れ、目の表面に当たり、目の乾きを促す。

「角膜には自己修復機能がありますが、目の酷使と“マスクドライ”で、修復が追いついていない。また、コロナによる精神疲労は自律神経の一つである交感神経を活性化し、涙の量を少なくすることも研究で明らかになっています」(堀教授)

 リモートワークによるドライアイ対策としては、仕事の環境を整えることも重要だ。「VDT作業を1時間したら休む」「加湿器を使う」「部屋は明るく、パソコンのモニターは明るくしすぎない」「パソコンは少し見下ろす位置に置き、モニターは目線の真正面に」「エアコンの風が顔や目に直接当たらないようにする」などが有効だ。

有田玲子(ありた・れいこ)/LIME研究会代表、東京大学臨床研究員。伊藤医院などでIPLなどのドライアイ最新治療を行っている(写真:本人提供)
有田玲子(ありた・れいこ)/LIME研究会代表、東京大学臨床研究員。伊藤医院などでIPLなどのドライアイ最新治療を行っている(写真:本人提供)

 2012年以降、ドライアイに対する考え方が大きく変わった。伊藤医院副院長の有田玲子医師が説明する。

「ドライアイの大半は、油分不足が原因であることが論文で発表されたのです」

 ドライアイという概念が生まれてから数十年にわたり、原因は「涙の水分不足」とされてきた。しかし、点眼薬などで涙の水分を補う治療をしても、症状がなかなか改善しないケースが少なくなかった。研究が進む中でわかってきたのは、ドライアイは油分不足でも起こるということだった。

「現在、ドライアイは国際的に、涙の水分が足りない『涙液分泌減少型』と、油分が足りず水分を補給してもすぐに蒸発する『涙液蒸発亢進(こうしん)型』の二つに分類されています。構成比としては、ドライアイの14%が涙液分泌減少型、50%が涙液蒸発亢進型。また、全体の36%が水分不足と油分不足の両方である混合型と言われています」(有田医師)

 涙は、油層、水層、ムチン層の3層で成り立っている。このうち涙の蒸発を防ぐ役割を担っているのが油層で、ベールのように角膜を守っている。しかし、不完全なまばたき、食生活の偏りなど何らかの原因で油層が不安定になると、油層が本来の役割を担えなくなり、涙が乾きやすくなる。これが、涙液蒸発亢進型だ。

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