パソコンやスマホ、テレビ、車の運転など私たちは日々、目を酷使している。コロナ禍で目にかかる負担はさらに大きくなった(撮影/写真部・張溢文)
パソコンやスマホ、テレビ、車の運転など私たちは日々、目を酷使している。コロナ禍で目にかかる負担はさらに大きくなった(撮影/写真部・張溢文)

 コロナ禍で目のトラブルが急増している。ステイホームでスマホやパソコンを使う時間が長くなり、ドライアイの悪化する人が増えている。ドライアイとうつ症状悪化の研究結果もある。ドライアイは放置せず、原因や対策を知り、しっかりとケアしたい。AERA 2021年11月15日号は「目が大事」特集。

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「点眼薬が手放せなくなっていて、我ながら怖い」

 健康食品メーカーに勤務する30代女性はこう話す。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年4月以来リモートワークが主となり、パソコンのモニターに向かう時間が飛躍的に増えた。眼精疲労がひどく、目がしょぼしょぼするので、1時間に何度も点眼薬に手が伸びる。「キターッ!」と感じる爽快感のあるものがお気に入りだが、すっきりしたと感じるのはほんの一瞬で、またすぐ目がしょぼしょぼする。

「点眼薬の差しすぎが、かえって目の不調を招いているかもしれません」

 こう指摘するのは、杏林大学医学部眼科学の山田昌和教授。山田教授が監修した、20~60代男女638人を対象にした「コロナ禍の点眼薬使用実態調査」(「現代人の角膜ケア研究室」が3月に実施)によると、点眼薬の使用者の5割近くがコロナ禍で点眼薬を差す回数が増えていた。

山田昌和(やまだ・まさかず)/角膜疾患に涙液や角膜試料の生化学的分析をし、疾患や病態のバイオマーカーの探索を行う。日本角膜学会理事長(写真:本人提供)
山田昌和(やまだ・まさかず)/角膜疾患に涙液や角膜試料の生化学的分析をし、疾患や病態のバイオマーカーの探索を行う。日本角膜学会理事長(写真:本人提供)

■点眼薬もストレスに

 また、全体の26%が症状がひどいときは適正回数の限度6回より多く差し、数の上限にこだわらず症状を感じる度に差していると答えた人は約49%。1日20回以上という人もいた。

「点眼薬は差せば、差すほど良いわけではありません。点眼薬1滴は涙の5倍の量があり、何度も使うと目に大きなストレスになります」(山田教授)

 点眼薬で涙が洗い流されて涙の油膜層が破壊され、目の角膜が傷つきやすくなる。また、多くの点眼薬には防腐剤が含まれている。防腐剤は品質保持のために必要だが、角膜に傷がついている人には、適正使用回数でも傷を悪化させる恐れがある。

「私がお勧めしているのは、朝起きてすぐ、昼食後、15時、夕食後に点眼薬を各1滴。それ以外にリフレッシュのために1~2滴差す。目がひんやりするタイプのものは角膜への刺激が強めなので、日常使いではなく、すっきりしたい時だけに限定して使う」(同)

堀裕一(ほり・ゆういち)/角膜疾患やドライアイなどを専門に研究。大阪大医学部、米ハーバード大スケペンス眼研究所研究員などを経て現職(写真:本人提供)
堀裕一(ほり・ゆういち)/角膜疾患やドライアイなどを専門に研究。大阪大医学部、米ハーバード大スケペンス眼研究所研究員などを経て現職(写真:本人提供)

 点眼薬をむやみに差す前に、そもそもなぜ何度も差したくなるのかを考えるべきだろう。もし「パソコンやスマホを見る時間が増え、眼精疲労がひどくなった」というなら、原因としてドライアイの悪化が疑われる。東邦大学医療センター大森病院眼科の堀裕一教授が言う。

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