撮影/写真部・張溢文
撮影/写真部・張溢文

「点眼薬を差しても、数分以内に目の乾きを感じるなら、涙液蒸発亢進型が考えられます」(同)

■セルフケアで油分改善

 ドライアイには油分不足が大いに関係していることを考えると、その対策が必須。有田医師によれば、「油分不足は、セルフケアでかなり改善できる」とのこと。提案するのは、まず「まぶたの温め」だ。温めたあずきのアイマスクや、ポリ袋に入れた蒸しタオルなどをまぶたにのせ、1日2回、1回5分以上温める。油層を形成する油はまぶたの裏側にあるマイボーム腺から分泌されるが、まぶたの温めでそれが促される。

 もう一つは「まばたきエクササイズ」。2秒目を閉じる→軽くまばたき2回→ギュッと2秒目を閉じる→パッと目を開いてまぶしい目をする→目尻と眉毛の間を上げて「キツネの目」をして閉じようとする。これを3日間以上続けると、徐々に効果が出てくるという。

「まつ毛が汚れているとマイボーム腺に脂が詰まりやすいので、洗顔時にまつ毛を指の腹で優しく洗う。水分と油分を両方増やすDHAやEPA、油分を増やすビタミンD、水分を増やすラクトフェリンといった栄養素を食事から取るのもいいでしょう」(同)

■うつ症状悪化の研究も

 なにをやっても良くならない……という場合は、より積極的な治療法もある。

 南青山アイクリニック東京では国内で行えるほとんどのドライアイの治療が可能。マイボーム腺機能不全を合併したドライアイに対し、「IPL治療」と「リピフロー」という最新治療を行っている。

「IPL治療では、特殊なフラッシュライトを照射し、マイボーム腺を刺激して油の分泌を改善します。リピフローは41~43度の熱をまぶたの裏側から与え、同時に圧力を加えてマッサージを行うので、効率よく油の分泌を促すことができます。二つを組み合わせて行うこともあります」(戸田郁子院長)

 これらの治療は自由診療なので健康保険の適用とならないが、悩んでいる人は一考の価値がある。というのも、ドライアイは“うつ”にも関係していることを示唆する研究結果が発表されたからだ。

 順天堂大学大学院医学研究科眼科学の猪俣武範准教授らは、独自に開発したアプリを用いて大規模臨床検査を実施。ドライアイの自覚症状が悪化すると、うつ症状も悪化傾向を示し、ドライアイの自覚症状が軽症であれば1.62倍、中等度であれば2.39倍、重症の人では3.29倍、抑うつ症状を併発しやすいとの結果が出た。(ライター・羽根田真智)

AERA 2021年11月15日号