参加した理工学部1年の加治木基洋さん(19)は言う。

「去年入学したけど、コロナ禍で授業は全てオンライン。起業を目指してサークルを作っても仲間は集まりませんでした。思い描いていた大学生活と全く違うなか、学生同士が交流できるイベントはすごくよかったです。もっと増やしてほしい」

 進行役の森川さんはこう話す。

「昨年、オンライン読書イベントを開いたときに『初めて学生同士で話せた』と話す新入生が何人かいて、交流の機会が必要だと感じました。内面的な対話ができる場にしていきたい」

 大学では昨秋から、「コロナ禍であっても充実した学生生活を止めない」をテーマに学生生活応援プロジェクトを展開。大学周辺の散歩など気軽な課外活動から海外の学生との交流まで企画は多様で、読書会もその一つだ。文学部准教授で学生センター長の齋藤勝さんはこう語る。

「コロナ禍のため大学生になった実感を持てない学生は少なくなく、学生センターには深刻な相談も寄せられています。外に出ることに不安を抱き、社会活動が止まってしまっているように感じている人もいます。ポジティブなメッセージを発信し続けることで、不安を抱えている学生たちに、大学がリアルに動いていることに気づいてもらい、少しでも前向きな気持ちになってもらえればと思っています」

■大学主催企画の安心感

 早稲田大学も「友人の輪を広げる交流の場」と題して多種多様な交流イベントを実施してきた。今年4月には2日間、2年生を対象に対面の交流会「しゃべり場inワセダ」を開催。応募を始めるとすぐに定員に達したという。当日は3、4年生も来て、学生生活の困りごとや留学の相談などにも応じた。教育連携課の荻原里砂課長は言う。

「これまでキャンパスに来たことがない学生がほとんどで、参加理由を尋ねたアンケートでは8割が『対面だから』と回答しました。リアルに話ができる場を求めていると感じています」

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