
旅行先で仕事もする「ワーケーション」が、新しい働き方として注目を集めている。働く場所を変えるという単なる気分転換でなく、人生を変えるきっかけ、をつかめるかもしれない。AERA 2021年10月4日号の記事を紹介。
* * *
神奈川県に住む山本雅也さんは今夏、幼い子どもと一緒に「家族ごとワーケーション」を実現した。山本さんは「ふるさと食体験」の事業を行う会社キッチハイクの代表。地域のおいしい食材と、その土地の人や食をテーマにした動画をセットで販売するオンラインサービスを運営している。
仕事を通じて全国各地の「地方」とつながりをつくってきたなかで、山本さんが注目したのが北海道厚沢部町(あっさぶちょう)だった。メークイン発祥の地としても知られる、函館から車で1時間ほど西に行った小さな町だ。
山本さんには2歳の娘がいる。いわゆる待機児童で、横浜市の認可外の保育園に通っている。商業ビルの中にあり、園庭もない。「もっと自然あふれるところで遊ばせられたらなぁ」という思いを募らせていた。
たまたま仕事で厚沢部町について調べていたところ、一つの写真が目に飛び込んできた。広大な原っぱのような園庭を持った、町認定こども園「はぜる」だった。
ここに子どもを通わせたい!
そう思った山本さんが考え付いたのが、子どもは保育園留学、親はワーケーション、というスタイルだ。
保育園やこども園には「一時預かり」という制度がある。方法や月次の上限は自治体によって異なるが、施設の定員に空きがある場合、一時的に受け入れてくれる。
「ワーケーションって、どうしても子どもがないがしろにされている感じがしていて、違和感があったんです。でも、『保育園留学』なら、子どもを主役にしながら、親がワーケーションできます」(山本さん)
■家族ごと地域に入って、思い入れは一生続く
妻の勤め先はフルリモート。二人ともWi‐Fiさえあれば仕事は回る。そして今年7月、山本さん一家は3週間のワーケーション+保育園留学を実現させた。
住まいは3LDKの新築一戸建て。厚沢部町が「お試し移住」での利用を目的に建てた「ちょっと暮らし住宅」を利用した。すぐ隣には移住交流センターがあり、ワークスペースとして開放されている。どちらもWi‐Fiが整備され、仕事には何の支障もない。
「何よりも、いま子どもをのびのびと遊ばせられているという親としての充実感、安心感があります。いつも以上にバリバリ仕事に向かうことができた気がします」(同)