今やスマートフォンとSNSの普及で誰もが出演者や取材者になれる時代。それまでは違和感なく見ていた政治家や記者の棒読みを「嘘くさいな」と感じることが増えたのではないかと思います。プロでなくても、映像でわかりやすくものを伝えることができる人はいくらでもいます。もはや映像に映るのも編集するのも世界に向かって発信するのも、特権ではなくなりました。災害などのニュースで繰り返し流れる映像は、その場に居合わせた市民がスマホで撮影した動画です。

発信することは「特権」ではなくなった。政治家や記者も、問われるのは語りのスキルではないか(gettyimages)

 こうした「映像表現の民主化」に伴い、紋切り型の言葉や絵面だけを整える従来のやり方では、人々を説得できなくなりました。政治家や記者も、語りのスキルを高める必要があります。考えてみれば、日常会話は一切台本なしですよね。当事者意識と強い思いがあれば、生きた言葉は自然と生まれてくるのです。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年10月4日号

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