岸田氏、河野氏、高市氏が総裁選に立候補を表明。野田氏は立候補を模索。不出馬を決めた石破氏の動きが鍵になると見られている (c)朝日新聞社
岸田氏、河野氏、高市氏が総裁選に立候補を表明。野田氏は立候補を模索。不出馬を決めた石破氏の動きが鍵になると見られている (c)朝日新聞社

 自民党総裁選(17日告示、29日投開票)が混戦模様だ。「脱安倍・麻生」「脱派閥政治」で世代間対立の様相を呈しているという。AERA 2021年9月27日号から。

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「1993年によく似ているな」

 ある自民党のベテラン議員は、水面直下で繰り広げられている総裁選のゴタゴタをそう揶揄(やゆ)した。93年に何が起きたのか。当時の宮沢喜一内閣に対する不満が自民党内で爆発。「派閥の古い体質はもうたくさんだ」「このままでは自民党の未来はない」と一部の若手が鉄の結束とまで謳われた派閥の掟(おきて)を振り切り造反。自民党は分裂し、直後に行われた解散総選挙で自民党は大敗。細川護熙首相が誕生し、自民党の55年体制に終止符を打つきっかけとなったのだ。

 無論、今の状況で自民党が割れることは想定できない。しかし、目下の総裁選で繰り広げられているのは「総選挙の顔を誰にするべきか」だけではない。自民党の若手を中心に深まる「古い派閥政治への抵抗」だ。

 その結果、この総裁選は世代間対立の様相を呈している。この「古い体質の派閥政治」の象徴こそ、今の自民党を支配する安倍晋三・前首相と麻生太郎・副総理兼財務相だ。総裁選の鍵となる人物は石破茂・元幹事長だと言われている。

■岸田氏は変化アピール

 総裁選の有力候補は岸田文雄・前政調会長(64)、河野太郎・行政改革相(58)だ。この2人を追う格好で高市早苗・前総務相(60)、野田聖子・幹事長代行(61)が続く。それぞれの候補について派閥との関係を整理する。

 まず最大派閥「細田派(衆61人、参35人)」の大勢の支持を取り付けたのは岸田氏だ。派閥トップの細田博之・元幹事長は14日に行われた臨時総会で「候補の一本化はせず、それぞれの議員の判断を尊重する」と語った。一本化をせず、という意味は、一部の所属議員から高市氏を推す声があがっているためだ。事実上の自主投票という体裁だ。

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