「本命は岸田氏。ただ自民党の自主性をアピールする意味でも高市氏も視野に入れた格好となった。安倍さん本人は分からないけれど、安倍さんに傾倒する人は高市さんを推すんじゃないかな」(細田派所属議員)

 岸田氏も「岸田派(衆34人・参12人)」を率いる派閥の領袖(りょうしゅう)だ。自分の派閥に加えて、他の派閥から何人の支持を得るのか。中でも細田派から何人の支持を得られるのかによって、決選投票の行方が大きく左右される。当初、岸田氏は菅政権の受け皿として「脱安倍・菅」、そして「古い派閥政治」からの脱却を掲げた。出馬会見では我こそは今までと違う自民党のリーダーとのアピールに余念がなかった。

 何しろ二階俊博幹事長を否定した上、アベノミクスの経済政策にダメ出し。新自由主義路線を否定し「助け合う社会」と、まるで立憲民主党を彷彿(ほうふつ)とさせるような独自の経済政策をぶちあげた。決定打は「森友問題の再調査」への言及だった。

「岸田さんは地味な人で何か大きな実績があるわけでもないけど、よく言えば安定している。抜きんでた存在ではなかったのですが、総裁選への出馬会見は生き生きとしていて、仲間内では『岸田変わったな』と評判も上々でした」(自民党議員)

■麻生は河野を信頼せず

 ところが、高市氏が立候補した途端、出馬会見で高らかに宣言した「脱安倍・菅」「古い派閥政治」への言及は急速にトーンダウン。会見の度に「アベノミクス継続」を表明し、「森友再調査」も封印した。

「しぼんだな。結局、安倍さんに尻尾をふってしまった。あれではダメだ。結局、地味な味気ない元の岸田さんに戻った」(同)

 党内から岸田氏を総裁へ押し上げようとする中堅、若手の支持が消えた。いったんしぼむと、岸田氏ほど地味なキャラクターはいない。

「太郎は変人をそのまま絵に描いたような人物だ。操縦不可能。権力を与えたら何をやりだすか分からない。だから同じ派閥の人間でも常に疑心暗鬼なんですよ」(麻生派所属のベテラン議員)

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