安倍・菅政権が幕を閉じ、次期総裁のもとで総選挙を迎えることになる。多くの腐敗を生んだ政治を清算できるのか。来たる総選挙の意義について考える。AERA 2021年9月20日号から。

菅義偉首相 (c)朝日新聞社
菅義偉首相 (c)朝日新聞社

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 感染拡大と病床逼迫が深刻化する中で、自民党総裁任期と衆院議員の任期が迫る。菅義偉首相は策を巡らせた。安倍晋三氏や麻生太郎副総理・財務相の言い分を受け入れて、二階俊博幹事長を交代させ、内閣改造も行う。そのうえで衆院解散・総選挙に踏み切り、勝利すれば総裁選も無投票で乗り切れるという戦略だった。だが、解散は安倍氏らの反対で封じられた。安倍氏にとってみれば、このまま解散・総選挙なら自民党の下野が現実味を帯びる。その場合、森友や桜を見る会などの疑惑を抱える安倍氏が国会の証人喚問を受ける可能性が高まる。その事態は絶対に避けたいのが本音だろう。

 総裁選や総選挙を控えた中での党役員人事や内閣改造も異例だ。自民党内からは「今回は断るつもり」といった反応が続出。霞が関の官僚たちを人事で操ってきた菅氏の神通力も、ここに至っては通用しなかった。

■元閣僚らが清算は?

 9月29日投開票で進められている総裁選は、菅首相に岸田文雄元外相が挑むという構図とみられたが、菅氏の出馬見送りで様相が一変。河野太郎規制改革担当相や高市早苗前総務相らも、岸田氏を追うという混戦模様になってきた。

 自民党の各派閥は、ベテランと若手との思惑の違いもあって、意思統一ができにくくなっている。小選挙区制の下で公認権や政治資金の配分で党執行部の力が強まり、派閥の影響力は弱まっている。総裁選でも派閥単位の意思統一は難しくなっているのが現実だ。

 総裁選ではコロナ対策とともに安倍・菅政権の評価が大きな争点となるが、安倍・菅政権で閣僚などを務めた岸田、河野、高市の各氏が安倍・菅政権の清算に踏み出せる可能性は小さい。そうであれば、国民への説明不足や政治腐敗が相次いだ安倍・菅政権の清算は国民の意思で断行されなければならない。総選挙こそ、民意の出番である。(政治ジャーナリスト・星浩)


AERA 2021年9月20日号より抜粋