ただし、西村センター長は、空気感染することと、感染しやすさは別の問題だと言う。

「空気感染について、すれ違っただけでうつる、感染がまたたく間に広がる、というイメージを持つ人がいますが、感染を媒介するのが空気というだけです。レジオネラ菌のように、ヒトからヒトには感染しない空気感染する病原体もあります」

 空気感染の場合でも飛沫感染同様、やはり感染者の近くにいる人が感染しやすく、離れれば感染のリスクは低くなる。感染者の周りはエアロゾルの濃度が高いからだ。人との距離をあける、3密を避けるといった対策は空気感染の場合も有効だ。

 空気感染を念頭に置いた対策として、冒頭の緊急声明はマスクと換気の重要性を強調する。

■マスクはぴったり装着

 米疾病対策センター(CDC)などによると、不織布マスクは効果が高い。ただし、鼻や頬、あごにぴったりくっつくように着用しないと、隙間からエアロゾルが出入りしてしまう。

「ポリウレタン製のマスクは単独ではほとんど効果がありませんが、不織布マスクを顔に密着させるために、不織布マスクの上から装着するのはひとつの手段です」(西村センター長)

 マウスシールドやフェイスシールドは空気感染を防ぐ効果はほとんどない。米サイエンス誌の総説によると、フェイスシールドは単独の場合、エアロゾルがシールドの下部にたまり、むしろ感染リスクを高める恐れもある。飲食店で使われる透明なパーティションも、パーティション内部のエアロゾルの濃度を高める恐れがあるという。

 住宅の換気は、熱中症などに注意しながらこまめに窓やドアを複数箇所開ける。それが無理なら、扇風機を使って部屋の空気が外に出やすいようにする。24時間換気システムが設置されているなら常時、稼働させ、キッチンや洗面所などの換気扇もこまめに稼働させるといい。

 人の大勢集まるビルの場合、フィルター付き空気清浄機を導入したり、UV殺菌装置でウイルスを不活化したり、二酸化炭素濃度測定器をおいて換気の必要性をこまめにチェックしたりするのも対策のひとつだ。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年9月13日号