AERA 2021年8月9日号より
AERA 2021年8月9日号より
加藤俊徳(かとう・としのり)/1961年生まれ。加藤プラチナクリニック院長・医学博士。「脳の学校」代表。米ミネソタ大、慶應義塾大、東京大などで脳研究に従事。著書に『片づけ脳』(自由国民社)など(写真:本人提供)
加藤俊徳(かとう・としのり)/1961年生まれ。加藤プラチナクリニック院長・医学博士。「脳の学校」代表。米ミネソタ大、慶應義塾大、東京大などで脳研究に従事。著書に『片づけ脳』(自由国民社)など(写真:本人提供)

 片づけられないのは、自分のせいではなく「脳」が関係しているという。一体どういうことなのか。AERA 2021年8月9日号で、加藤俊徳医師が解説する。

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片付けられないのは、整理整頓ができない自分のせい」と思っている人が多いのではないでしょうか? でも、それは違います。脳内科医の私の立場から言うと、片付けられないのは「脳のせい」です。

 脳には1千億個以上の神経細胞が存在し、同じような働きをする細胞で集団を作っています。私はこれを「脳番地」という概念で表現しています。

 脳番地は機能別に視覚系、理解系、運動系、思考系、記憶系、感情系、聴覚系、伝達系に分類でき、弱い脳番地があると、それが行動や思考に影響を及ぼします。つまり、片付けられないのも、未熟な脳番地があるゆえに生じた現象なのです。

 具体的に言うと、視覚系は見えたことを脳に伝える脳番地。ここが弱いと、部屋が散らかっていると認識できず、気になりません。理解系が弱い人は、片付けたくてもどうしていいかわからない。運動系が弱いと、動くのが億劫で片付けを面倒に感じてしまう。思考系が弱いと、片付けの基本である「ものの場所を決める」ことができません。元にあった場所が思い出せず、片付けられない人は記憶系が弱い。感情系が衰えると、自分や他人の感情に無頓着で、片付けを他人任せにしてしまいがち。聴覚系が弱いと、「片付けて」と言われてもすぐ忘れてしまう。伝達系が未熟だと、人に「片付けてほしい」とうまく伝えられず、結果的に部屋が散らかってしまいます。

 片付けられる脳になるには、どこの脳番地が弱いかを知り、鍛えることです。

 もうひとつ大切なのが、脳を片付けられる状態に置くことです。片付けは、実は脳を大いに使う行為です。疲労時や睡眠不足の時ではなく、脳が覚醒し元気な時に範囲を決めて行うことです。

 私の場合、「朝起きてすぐ片付け」が習慣化しています。月曜日は片付けのプランニング、火曜日は台所回り、水曜日は水回り……というように、曜日ごとに片付けを決めるのもおすすめです。

(ライター・羽根田真智)

AERA 2021年8月9日号