それが小園町長の耳に入り「御代田町の広報やふるさと納税に関するコミュニケーション設計のお手伝いをすることになりました。東京にいた時と違って、自分が住む町との距離が近いですね」。町とのプロジェクトでは、「まずは役場の職員が自走できる土台づくりを意識している」という。

「魅力的な人たちが続々と御代田周辺に移り住み、地域に根ざした活動が同時多発的に生まれている。町と住民が緩やかにつながり合いながら、そうした流れを後押ししていけるような情報発信のあり方を探っていきたい」(大月さん)

 小園町長は、「ふるさと納税については、本来なら他の自治体に納められた税金なので、根っこには遠慮の気持ちも抱きながら進めている。支援をいただいた方々は、わが町のファンを超え、まちづくりの当事者と考えます。返礼品依存を薄める努力も欠かせません」。

「設計室」は、同じ長野県の須坂市長や岡山県総社市長ら、個別に同志を拡大しつつあるそうだ。

■新旧住民「交流」に活気

 移住者を迎え入れる「旧住民」の反応はどうか。

 しなの鉄道「御代田駅」構内にスタジオがある西軽井沢ケーブル 代表の石川伸一さんは、「もともと移住者が多い町だから、外から来た人との付き合いには、慣れているんだ」と話す。毎年秋の町民運動会はコロナ禍で2年連続中止になっているが、石川さんも毎年のようにカメラを担いで取材する「19地区対抗綱引き」をはじめ新旧住民が交わる機会が少なくない。

「カーリング」も古くから盛んな町で、五輪選手も輩出したことがある。全国でただひとつ民間施設「あさまハイランドスポーツクラブ」の理事長を25年間務める土屋美喜子さん (63)は昨年夏、自宅の向かいに若い家族が埼玉県から引っ越してきたばかり。移住者の友人も少なくない。「カーリングクラブは現在コロナ禍で自由に動けないが 移住者とも交流を拡大したい」と土屋さんは意気込みを語る。

 新旧の住民が一体となって魅力をつくり出す町。「軽井沢の隣」とは言わせない存在感だ。(文/ジャーナリスト・菅沼栄一郎)

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