実家の環境は、豪雨や台風、地震など、もしもの時に危険がないよう整えておきたい。お盆に帰省して手伝いたいところだが、このコロナ禍ではなかなかそうもいかない。

 だが、諦める必要はない。実家の片付けには、実はリモートだからこそできることがたくさんあるのだ。いまはリモートで片付け準備を進めたい。

 念頭に置いておきたいのは、親は必ずしも片付けを望んでいるわけではないということ。子どもがいきなり「何かあったときのために、片付けを」「終活を」と迫れば、反発を招くこともある。たとえ親子であっても、はじめのコミュニケーションがとにかく肝要だ。それがなかったために、片付けをきっかけに喧嘩になり、絶縁状態になった親子を古堅さんはたくさん見てきた。

「片付けは目的ではなく手段。片付けてどうしたいのか。どうしたら楽しく幸せに暮らせるのか」(古堅さん=以下同)

 片付ける理由は、「万が一に備えて身辺整理をしてほしい」や「いずれ私が困るから」ではなく、親に健康に安全に楽しく暮らしてほしいから。肝に銘じて、言葉がけに留意したい。

まずはコミュニケーションを取ることからはじめよう。「大丈夫、困っていることはない?」「廊下に物が置いてあると、転びやすくなって危ないよ」「洗濯物を干す場所としまうところが離れていると、行き来が面倒で大変じゃない?」

 子どもにすれば「もう使わないし着ない」と思う物にしても、親にとっては思い入れのある大切な物かもしれない。「捨てていいよね」「いるの、いらないの?」と畳み掛けるのはNGだ。

「Zoomなどのオンラインを利用して、家の中の物を見ながらお父さん、お母さんの思い出話を聞く。その中で、流れとして『写真を撮って保存しておく方法もあるね』となるかもしれません。いるか、いらないかを判断するのは、親本人です」

 上から目線で指図されれば、子どもといえど腹が立つ。ある40代の会社員女性も、郷里の母親に電話で「今のうちに納戸を整理したら」と話した。「はいはい、わかったわよ!」との返事とともに通話は終了したはずが、切れていなかったスマホから聞こえてきたのはやけくそ気味の「うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ」の歌声。「母の気持ちがわかった気がしました」(女性)。後日、気を取り直して「お母さんの着物見せて?」と尋ねると、「いいのがとってあるの。全部あなたにあげるから」とご機嫌な返事がきたという。(ライター・羽根田真智)

AERA 2021年8月9日号より抜粋