※写真はイメージ(gettyimages)
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整理収納アドバイザー 古堅純子さん/幸せ住空間セラピスト。個人宅や企業内での整理収納コンサルティング、収納サービスを提供。家事効率化支援事業も展開。近著に「シニアのためのなぜかワクワクする片づけの新常識」(写真:本人提供)
整理収納アドバイザー 古堅純子さん/幸せ住空間セラピスト。個人宅や企業内での整理収納コンサルティング、収納サービスを提供。家事効率化支援事業も展開。近著に「シニアのためのなぜかワクワクする片づけの新常識」(写真:本人提供)

 コロナ禍で離れて暮らす親と会えない日々が続く。実家の片付け問題が気になる人も少なくないだろう。高齢者にとって、物であふれた部屋は転倒リスクが高い。だが、親が片付けを望んでいない場合もある。親が片づけへの一歩を踏み出すために必要なコミュニケーションとは。「リモート片付け」を特集したAERA 2021年8月9日号から。

【写真】整理収納アドバイザー 古堅純子さん

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 昨年から続くコロナ禍で、離れて暮らす親に会えない日々が続いている。

 東京都板橋区在住の女性(49)は、昨年4月の緊急事態宣言以降、埼玉県川越市の実家に一度も帰れていない。実家までは電車で一本、1時間ほどで行けるが、ともに80代で持病のある両親が「都内在住者」との接触を極端に不安がっているからだ。実家の徒歩圏内に住む姉(50)も、夫や子どもが都内に通勤・通学しているため、両親とは玄関先で短時間、話す程度。

「ワクチンの接種が終わったら実家へ」と姉妹で話してはいるが、いまも心配なのが、両親の転倒リスクだ。コロナ禍の始まる少し前から両親、姉妹で実家の片付けを始めたため、部屋や廊下に物があふれている。コロナ禍で、日用品の備蓄も必要になったから、さらにモノは増えただろう。つまずいたりしないだろうか。母親は、1度転んで手首を骨折しているので、2度目の転倒は避けたい。

 姉によると、外出もほとんどしない両親は、この1年で足腰がずいぶん弱った様子。女性はオンラインで両親とやり取りする度、「食事はきちんと取ってね」と伝えるが、「動かないから食欲もわかない」という返事に、「サルコペニア(筋肉量が減少し筋力や身体機能が低下した状態)」も懸念してしまう。

■転倒しにくい部屋に

 高齢者の転倒は大きなけがにつながりやすい。東京消防庁の発表によれば、管内での日常生活における事故(交通事故を除く)で救急搬送された人の半数以上は65歳以上で、事故の内容は「ころぶ」が8割以上を占める(2015年から19年)。19年は「ころぶ」の発生場所は「住居等居住場所」が過半数を占め、「住居等居住場所」では屋内が9割以上。その内訳は「居室・寝室」が最多で、「玄関・勝手口」「廊下・縁側・通路」と続く。

 個人宅や企業内での整理収納コンサルティングを行う古堅純子さんは、こう指摘する。

「高齢者のお宅では、部屋や廊下に物が置いてある状態は、とても危険。転倒事故を起こさないために、安全に通行できるライフラインの確保がマストです」

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