──五輪はすでに開催が既定路線とも言われています。

飯村:私はまだあきらめていません。このまま強行すれば、五輪が感染急拡大の原因になる「スーパースプレッダー・イベント」になりかねません。声を上げ続けなければ、政権や主催者にも、海外にも伝わらない。最後の最後まで声を上げ続けるのは非常に重要です。

上野:もうやめられない、引き返せない、やるしかない。そういった雰囲気にのまれつつあります。いうなれば開戦前夜。太平洋戦争のときもそんな雰囲気に社会がのまれたんだと思う。私たちは、親世代に「なんであんなバカな戦争をしたんだ」と詰め寄った世代です。ここで止めなければ将来、若い人たちから同じように「あんな無謀な五輪、何で止めなかったの」と言われます。メディアの責任も大きいですよ。強行か、延期・中止か聞いていた世論調査が、気がついたら「観客を制限して開催」みたいな選択肢が増えている。当然数字は大きく変わります。「開催ありき」に、メディアも含めてのみ込まれています。

■社会が「突撃態勢」に

飯村:社会に漂う無力感、虚無感は私も強く感じています。日本は「個」が確立していないなどと言われますが、政府や主催者、そして社会が空気のように「突撃態勢」に入っています。海外から見ても異様でしょう。

上野:菅(義偉)首相はG7サミット(主要7カ国首脳会議)で世界の支持を取りつけたと誇っていました。外交的にはもちろん「やめろ」とは言わないでしょうが、実際のところどうなのか。元外交官としてどうお考えですか?

飯村:G7の宣言で言われたのは「安全・安心な形で開催することを支持する」です。その前の日米首脳会談では「安全・安心な大会を開催するための菅首相の努力を支持する」。つまり、白紙委任ではありません。「安全・安心な大会」が国際公約ですが、それが守れるとはとても思えない。

上野:戦略・戦術・戦闘で見ると「強行開催」という誤った戦略に固執し、ワクチン接種という防衛戦術の装備もない。戦闘レベルでも現場の「バブル」方式が穴だらけだと露呈しました。すべての面でアウトですよ。

次のページ