枝野幸男氏は「10月までの間に行われる総選挙は政権選択選挙。その選択肢の一つとして名乗りを上げたい」と言う(撮影/写真部・東川哲也)
枝野幸男氏は「10月までの間に行われる総選挙は政権選択選挙。その選択肢の一つとして名乗りを上げたい」と言う(撮影/写真部・東川哲也)

 何かと後手にまわりがちな日本政府のコロナ対策。野党第1党である立憲民主党の枝野幸男代表(57)はどう見るのか。AERA 2021年6月14日号で話を聞いた。

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──枝野さんが書かれた『枝野ビジョン』で示した、「支え合う社会」の構想について教えてください。

 最近の言葉を使うならば「公助(政治)」が介在することで、誰もが「支え手」であり「支えられ手」になることができる社会です。2017年、私は「立憲民主党はあなたです」と言って、この新しい政党を立ち上げました。その意味は「(立憲民主党が)あなたを助けますよ」ではありませんでした。

 私が一貫して言い続けているのは、「政治が誰かを助けるのではなく、あなたも一緒にその支え合う政治を作りませんか」ということです。政治家と国民は民主主義を前に進める対等なパートナーだと考えています。

──具体的にはどんな政策で、支え合う社会を実現するのでしょうか?

 具体的には、普遍主義という言葉を使っています。病気介護子育てにおけるサポートが必要な状況は、誰にでも起こり得る。だからその判断基準は「所得」ではなく、「そのケアが必要かどうか」だと思っています。ただし、ケアにかかる財政負担は、財政状況に応じてやるべきで、たまたまお金を稼いでいる人は今は支え手に回ると考えてもらう。突然、支えられる側になることだって十分にあり得るのですから。

■支え合うという意識

 支え合うという意識を社会で共有したい。年金や介護制度は親の老後の家計や介護負担という意味でも、現役世代にも恩恵があります。現金給付という公的支援によって家計消費を喚起し、景気回復を目指すだけでは不十分で、国民の不安を少なくするためには医療、介護、保育、教育などの公的サービス(ベーシックサービス)に誰でもアクセスできる社会構造を作るべきだと思っています。自分がケアを必要とする側の立場になったとき、それを自己責任で済まされては、社会の閉塞(へいそく)状況は変わるはずもありません。

──政府の新型コロナウイルス対策に対し、政治が機能しないことにいら立ちを覚える国民は多いと思います。官房長官を経験した立場から、なぜ機能しないと思われますか?

 総理大臣が指示を出したから各省庁が動くわけではありません。役所ごとの縦割りや役所の権限の境目がある。それを総合的に調整をする官房長官が機能しないと到底無理なのです。安倍・菅政権の非常時における対応が後手後手になるのは、「上(総理)は決定するけど、本来は権限があるはずの下(内閣官房)が動かない」という状態が1年半以上続いているからではないでしょうか。

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