「映画は時代を映す鏡」 アカデミー賞受賞作のヒロインの姿に、新しい世界を見出す (1/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「映画は時代を映す鏡」 アカデミー賞受賞作のヒロインの姿に、新しい世界を見出す

坂口さゆりAERA
「ノマドランド」/クロエ・ジャオの監督賞はアジア女性初、女性の受賞も史上2人目。フランシス・マクドーマンドの3度目の主演女優賞はキャサリーン・ヘプバーンに次ぐ快挙 (c)2020 20th Century Studios. All rights reserved.

「ノマドランド」/クロエ・ジャオの監督賞はアジア女性初、女性の受賞も史上2人目。フランシス・マクドーマンドの3度目の主演女優賞はキャサリーン・ヘプバーンに次ぐ快挙 (c)2020 20th Century Studios. All rights reserved.

 コロナ禍の影響を受け、例年より約2カ月遅れとなったアカデミー賞授賞式。受賞作も例年とは一線を画す。時代や社会が色濃く反映された作品が並んだ。AERA 2021年5月24日号に掲載された記事を紹介する。

【写真特集】「女性」で見るアカデミー賞

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「あんたは女性にとって最悪の悪夢が何か、想像できる?」

 言い訳する男にそう言い返すのは、アカデミー賞脚本賞を受賞した「プロミシング・ヤング・ウーマン」のヒロイン・キャシー(キャリー・マリガン)だ。

 男たちの欲望のはけ口となってしまった女性が性犯罪を告発しても、加害者が“前途有望”であることを理由に泣き寝入りさせられる。キャシーはそれを許さない。同調圧力女とわきまえる女も同罪と復讐を果たす。

■「史上初」の受賞者も

 性犯罪という深刻なテーマをブラックな笑いとポップな映像と音楽、ラブストーリーという変化球で勝負した快作。観る者も自分自身の「ジェンダーバイアス」を問われる。主演女優賞にノミネートされたマリガンの怪演ぶりが見もの。「女」という理由だけで、子供のうちから理不尽な扱いを受けた経験があるすべての女性に薦めたい作品だ。

 2017年にハリウッドの実力者ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力の告発記事をきっかけに世界中に広がった#MeToo運動。20年に黒人に対する警察の暴力から拡大した人種差別抗議運動「BLM」。映画は社会を映す鏡だ。ここ数年の社会の動きに合わせるように、性差別や黒人問題をテーマにした映画が活発に作られてきた。

 米国映画芸術科学アカデミーは、昨年9月に第96回以降の作品賞ノミネートに課される条件を制定し、ダイバーシティー化を進める。その影響か、今年第93回の受賞作も、これまでになく多くの女性や有色人種がノミネートされ、「史上初」の受賞者も出た。

■ふてぶてしさには理由

 メイク&ヘア賞でミア・ニールが初の黒人女性受賞者となった「マ・レイニーのブラックボトム」(衣装デザイン賞も獲得)。ヒロインは「ブルースの母」と称され、絶大な人気を誇る実在のブルースシンガー、マ・レイニー。女性であり、さらに黒人。しかも舞台は1927年、白人が圧倒的に多いシカゴ。レコーディングにやってきたマ・レイニーは、「扇風機を持ってこい」「コーラがなければ歌わない」と、言いたい放題。だが、そんなふてぶてしい態度には理由があった。彼女はバンド仲間に言う。


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