「球界で最も打たれない球が帰ってきた」と評価が高い大谷翔平選手(gettyimages / Katelyn Mulcahy)
「球界で最も打たれない球が帰ってきた」と評価が高い大谷翔平選手(gettyimages / Katelyn Mulcahy)

 投打で活躍を続けている大リーグ・エンゼルスの大谷翔平。負傷や度重なる手術を乗り越え進化する“リアル二刀流”に、日米の野球ファンが沸いている。米国では大谷の投球を分析し、高く評価する声も。AERA 2021年5月17日号で取り上げた。

【4年前にAERAの表紙に登場した大谷翔平選手はこちら】

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 三振奪取率が高い要因として挙げられるのが、落差の大きいスプリットと鋭く横滑りするスライダーだ。大リーグ公式サイトは大谷が登板した3試合を分析している。「球界で最も打たれない球が帰ってきた」と銘打ち、スプリットで19打数無安打18奪三振と驚異的な成績を紹介。「これはクレージーだ」と独特の表現で高く評価している。

 また、フォロワー数が28万人を超える野球アナリストのロブ・フリードマン氏は自身のツイッターに、大谷が今季初勝利を挙げた4月26日のレンジャーズ戦後、直球とスライダーを投げる動画を重ねた「オーバーレイ動画」を投稿。動画を見ると捕手がボールを受ける位置はほぼ同じだが、軌道は全く異なる。スライダーは外角ボールゾーンから滑るように曲がり、ストライクゾーンに食い込んでくる。通称「バックドア」だ。フリードマン氏はこう絶賛した。

「97マイル(約156キロ)の直球と82マイル(約132キロ)のバックドアスライダー。このスライダーがどれだけホームプレートから遠く離れたところから来たかわかるだろう」

■制球力に楽観的な見方

 課題もある。制球力だ。今季計18回3分の2を投げて19四球。直球が真ん中に集まりやすく、変化球も抜け球が目立つ。ただ、この数字に関しては楽観的な見方が多い。

「大谷は18年10月にトミー・ジョン手術を受けて、19年は登板なし。昨年も2試合登板のみでまだブランクがある。試合を重ねれば制球力は徐々に上がってくるでしょう。神経質になる必要はないと思います」(スポーツ紙大リーグ担当)

「リアル二刀流」で最も怖いのが故障だ。打者として相手チームの脅威となっている大谷は厳しいマークに遭っている。4月5日のアストロズ戦で八回に代打出場すると、スライダーが右太もも付近を直撃。大谷は一塁へ歩きながら珍しく相手投手をにらみつけ、元同僚の捕手が仲裁に入るしぐさを見せた。5月2日のマリナーズ戦でも一回に相手左腕の150キロ速球が右ひじのエルボーガードと上腕の境目付近を直撃。バットを放り捨て、ひざをつくとしばらく動くことができなかった。

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