西原憲一(にしはら・けんいち)/UFPF代表のファイナンシャルプランナー、税理士。個人のマネープラン作成や法人の税務コンサルに従事(本人提供)
西原憲一(にしはら・けんいち)/UFPF代表のファイナンシャルプランナー、税理士。個人のマネープラン作成や法人の税務コンサルに従事(本人提供)

 再び盛り上がりを見せる仮想通貨。いざ売る時には、通常の金融商品と税率が異なることに注意が必要だ。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号は、知っておきたい基礎知識を紹介する。

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 仮想通貨を売る時は利益にかかる税金が高いことに注意したい。ファイナンシャルプランナーで税理士の西原憲一さんに教わった。

「税法上、仮想通貨はある意味“モノ扱い”です。株式や投資信託、FX(外国為替証拠金取引)と違って、仮想通貨は『支払いや決済の手段』と見なされています。そのため金融商品取引法ではなく、資金決済法でルールが定められています」

 通常の金融商品は利益の約20%が差し引かれる「申告分離課税」方式だが、仮想通貨は「雑所得」扱い。本業など他の所得と合算した総合課税が適用される。

「4千万円以上の利益が出ると、所得税と住民税を合わせた税率は55%に達します。つまり大きく儲けると半分以上は税金でもっていかれる計算。やはり、通常の金融商品のように他の所得と分離して課税され、いくら儲かっても約20%の税金で済ませられるようにならないと、税制面では不利です」

■FXは分離まで14年

 FXの場合、1998年に外為法改正で商品が生まれてから2012年に申告分離課税扱いになるまで14年かかった。

「仮想通貨に関する資金決済法が改正されて4年以上が経過しています。そろそろ、税の取り扱いについて改めて検討する段階になっていると思います」

 仮想通貨には安全性の懸念もある。しかし金融庁の指導もあり、日本の交換業者では、インターネットから切り離されハッキングの心配がない「コールド・ウォレット」という保管場所で顧客の仮想通貨のほとんどを管理するようになった。金融商品として発展途上ではあるが、安全性の面は以前より向上している。

 4月20日にはカナダで3本目となる仮想通貨ETF(上場投信)の取引もスタートした。日本での本格金融商品化を注視したい局面だ。(ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)

AERA 2021年5月3日-5月10日合併号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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