■コロナの影響で変化

 もちろん大黒柱妻にしてもその夫にしても、望んでなった人、望んではいないがそうならざるを得なかった人、様々だ。そしてその立場は変わりうる。

 メディア関連で働く50代のフリーランスの女性は大黒柱妻歴20年超。

 収入の割合から自分が多めに生活費を負担するのは仕方ないと理解しているが、子どもの学費なども妻から催促しない限り夫は積極的に払おうとしない。甘えないでよと思いつつも言うに言えず、これまでは家計の話がしづらかった。

「それぞれ納得しているつもりでも、お互いの中に『男の人が払うのが“普通”だよね、でもうちは違うよね』という思いがどこかにあるのだと思います」

 お金の話になると夫が機嫌を損ねたり言い争いになったりしたことも多々ある。だから夫のプライドを傷つけないように、1週間以上考えてシナリオを作ってから細心の注意を払って切り出してきた。

 それが今年、コロナの影響で仕事が大幅に減り、収入が夫とイーブンになった。

「夫も気が楽だろうし、こちらもないものはないので『半分よろしく』と心置きなく家計の話ができるようになりました」

 コロナだけではない。人生100年時代、大黒柱のスイッチは誰にでも起こり得る。ライフステージによって優先事項が変わったり、学び直しの時期があったり、人生のプランは多様でいい。「我が家の最適解」は、それぞれの家庭にあるのだ。(編集部・高橋有紀)

AERA 2021年5月3日-5月10日合併号