※写真はイメージ(gettyimages)
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AERA 2021年5月3日-10日合併号より
AERA 2021年5月3日-10日合併号より

「夫が大黒柱」が大多数のニッポンの家庭。では、その立場が夫婦で逆転したらどうなる? 自らにあるステレオタイプに気づくと自由になれる。夫婦間の関係性について取り上げた、AERA 2021年5月3日-5月10日合併号の記事を紹介する。

【図】「大黒柱妻」が言いたいこととは?

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 男女間の賃金格差は少しずつ改善されているとはいえ、いまだ大きな隔たりがある。男性を100とした場合、女性は74.4(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2020年)。この現実がある以上、稼ぎ手という意味において夫が大黒柱となる家庭はまだまだマジョリティーだ。

 この役割が入れ替わると何が起きるか。田房永子さんによる漫画『大黒柱妻の日常 共働きワンオペ妻が、夫と役割交替してみたら?』は、夫と妻の立場を反転させることで、社会に根強く残る不平等を浮かび上がらせる。

 漫画の主人公・ふさ子は、7年間、家事育児ワンオペ生活。その立場を脱却するために生活費を自ら稼ごうと決意する。

■罪悪感がなくなった

 作品はフィクションだがベースには田房さん自身の体験がある。初めて生活費を半分負担したときの「快適さ」を田房さんはこう振り返る。

「夫が掃除をしている横でソファに座っていられるようになったんです。それまでは夫が掃除していたら、自分も立って何かしていなきゃいけないと思っていました。その罪悪感がなくなった。衝撃でした」

 田房さんは同作に、夫に対して萎縮しすぎている専業主婦の人たちへのメッセージも込めたという。「養ってもらっているから」「仕事のほうが大変だから」と不満を封じ込めてしまう専業主婦を見てきたからだ。

「私自身、仕事なしのワンオペ、仕事しながらの家事育児、仕事だけの生活、どれもやりましたが『仕事だけ担当』の日は圧倒的にラク。『仕事だけしている配偶者に遠慮しすぎなくていいんだよ』と伝えたい、と思いながら描きました」(田房さん)

 念願の大黒柱妻(ふさ子の定義によれば「夫より収入が多く生活費の7割以上を負担している妻」を指す)になり、仕事に邁進するふさ子。頭の中からは子どものことが消え、習い事への送迎や保護者会の出席などをすっぽかす。「名もなき家事」をすべて負担する夫から異議申し立てを受けても「別に頼んでないし」の禁句を口走りそうになってしまう。それはかつて夫から聞くたびに腹を立ててきた一言だ。「男のズルさ」だと思っていたものを“大黒柱”になったら自分も身につけ、「昭和の親父」的な振る舞いをしてしまう。

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