イラスト/石山好宏
イラスト/石山好宏

 会社を辞めて運用益だけで生活するFIREを実現すれば、生活は大きく変わる。人間関係や、やりがいをどう考えるべきか。47歳で資産約1億円を築いて会社を早期リタイアした桶井道さん、51歳でFIREを実現した個人投資家のエルさん、仕事をしながら配当収入で生活費を得るちーさん。AERA 2021年4月5日号は3人に聞いた。

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 もう一つ、多くの人がFIREについて不安に思うのが「人間関係が希薄にならないか」「仕事がなくなり、やりがいを失ってしまわないか」といった「こころの問題」だ。

 エルさんは、「たしかに、友人が会社関係に限られているようだと、早期リタイアで人間関係が希薄になるおそれがある」と話す。その結果、家にずっといることになり、夫婦ならお互いが四六時中顔を突き合わせなければならないという問題も生まれる。その意味で、「家以外の居場所」を作っておくことが大事だと指摘する。

「私の場合は退職前から、読書会のメンバーになったり、映画鑑賞会のようなフェイスブックの非公開サークルを主宰したり、趣味を介した友人関係がありました。そういった場で、投資や本や映画や音楽の人脈がクロスオーバーしていくという良さもあります。ただし、そういうのは一朝一夕にはできないので、FIREをめざすのであれば、早めに意識し始めることがとても大切です。『共通の趣味』がやはりキーワードになりますかね」

 定年退職後に、それまで趣味もなく会社一筋だった人が、生きていく目標を失って落ち込むというのはよく聞く話。FIREでも、仕事以外の生きがいを見つけておくことが重要だ。

 FIREで「失うもの」ももちろんある。その最たるものが「属性」と「世間体」だ。

 まだ40代や50代なのにいわゆる「仕事をしていない」状態は、一般的には何とも説明しにくい事態を招くこともあるだろう。「どんな仕事してるの?」と聞かれて、「投資家です」と答えるより、おそらく以前の職種と勤務先を答えた方が、相手の納得度や印象は良いはずだとエルさんは言う。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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安住拓哉

安住拓哉

出版社勤務を経て2021年に独立。経済関連記事全般が得意。取材・執筆歴20年以上。雑誌の取材記事の他、単行本のライティングも数多く手掛ける。

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