生活保護の申請「扶養照会」がハードルに DV加害者の元夫に連絡、身の危険を感じたメール (1/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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生活保護の申請「扶養照会」がハードルに DV加害者の元夫に連絡、身の危険を感じたメール

野村昌二AERA
生活保護申請書の「援助者の状況」欄に記入していない親族にも、戸籍をさかのぼって扶養の可否を照会されることに抵抗を感じる人が多い(撮影/写真部・高橋奈緒)

生活保護申請書の「援助者の状況」欄に記入していない親族にも、戸籍をさかのぼって扶養の可否を照会されることに抵抗を感じる人が多い(撮影/写真部・高橋奈緒)

AERA 2021年3月22日号より

AERA 2021年3月22日号より

 生活に困窮し路上生活を強いられても「生活保護は受けたくない」という人々がいる。役所が親族に扶養の意思を聞く「扶養照会」が、心理面の壁になっている。AERA 2021年3月22日号から。

【家族に知られるのが一番のハードル 扶養照会に抵抗がある理由はこちら】

*  *  *
「生活保護は受けたくない」

 昨春から新型コロナウイルス禍で困窮する人たちを取材してきて、何度も聞いた言葉だ。年齢も性別も、関係なかった。

 都内で行われる炊き出しで出会った男性(30代)もそんな一人だった。コロナを理由に勤務先の工場を雇い止めになり、所持金が底をつきホームレスになった。つらくて死にたくなり、実際、薬を大量に飲んで死のうとした。そこまで追い詰められていたにもかかわらず、「生活保護はいやです」と言う。理由を聞くとこう答えた。

「子どもの時に親から虐待を受けていて何年も連絡を取っていない。そんな親に連絡がいって、自分の居場所がわかると何をされるかわからない」

■照会→援助は1%だけ

 生活保護は国民の生命と暮らしを守る「最後の安全網」だ。機能しなければ、命の危険に直結する。その制度を、路上に投げ出された人ですら「受けたくない」と感じている理由を、生活困窮者を支援する「つくろい東京ファンド」代表理事の稲葉剛さん(52)はこう指摘する。

「生活保護申請の一番の阻害要因となり、忌避感の背景にあるのが、扶養照会です」

 生活保護の申請書は、住んでいる市区町村の福祉事務所に提出する。申請を受けると福祉事務所では戸籍情報を基に、通常2親等内(親・子・きょうだい・祖父母・孫)の「直系血族および兄弟姉妹」に「援助は可能かどうか」という書類を送付する。これが「扶養照会」だ。

 同ファンドは昨年末から年始にかけ、生活保護利用を妨げる要因を探るため、都内で実施されたいくつかの生活困窮者向けの緊急相談会を訪れた人にアンケートを実施。20代から80代まで計165件の回答があった。

 回答のうち、現在生活保護を利用していない128人にその理由を聞くと(複数回答)、34.4%が「家族に知られるのが嫌」と答えた。また、生活保護を利用したことがある59人のうち、扶養照会に「抵抗感があった」と答えた人は54.2%と半数を超えた。理由としてアンケートには様々な声が寄せられた。


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