「推したい」という内なる衝動を感じる瞬間はたくさんある。

「花江さんはYouTubeでゲーム実況をするのですが、ホラーゲームをプレイすることが多くて、意外だなと思いました。私生活や趣味が垣間見えると、『推せる』と思います」(鈴木さん)

 ライブで声優がキャラクターのイメージぴったりの表情やしぐさで出てきたときは、「アニメから3次元に出てきたみたい、と興奮して推しちゃいます」。推しがインタビューで役への思い入れを語れば、プロ意識に感服。社会人として見習いたいと、「ますます推したくなる」という。

 なぜ推しを推すのか。「尊さゆえ」と語るのは、都内の営業事務の女性(25)だ。女性は元乃木坂46の「白石麻衣さん推し」。白石さんの美しさに衝撃を受けてから、推し歴8年。白石さんを「まいやん」と呼び、握手会やライブは全て参加している。

「テレビで見てもかわいいけど、生で見るとさらに美しい女神様。ライブでは尊くて、毎回ボロボロ泣いています。そういう時が人生で一番楽しいです」(女性)

■内面だって近づきたい

「尊い」とは、推し活をする人がよく使う言葉だ。だが、推しは「尊い」が、「雲の上の存在」というわけではないという。

「SNSでまいやんのヘアスタイルをまとめたり、衣装のコスプレをアップするようになって、フォロワーが増えました。ファン同士でつながって情報交換する。すると女神様だけど少し年上の憧れのお姉さんだなと思えるんです」(同)

 女性自身も変わった。

「黒や金のストリート系の服ばかり着ていたのが、白やピンクのガーリーな服を着るようになりました。眉毛の描き方も研究して、あか抜けたと思います。内面もまいやんに近づきたい。メンバーが泣いていたら、一番に駆け寄るのはまいやんだそうです。私も困っている人に、すぐに駆け寄る人になりたい」(同)

 人の心に「推したい」熱量を呼び覚まし、人を変える力を持つ。いったい推しとは何なのか。

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