猫を感染症から守るには、どうすればいいのか。NyAERA2021から抜粋する。撮影/張 溢文
猫を感染症から守るには、どうすればいいのか。NyAERA2021から抜粋する。撮影/張 溢文
猫にとって新型コロナウイルスは「脅威ではない」が警戒すべき理由がある。撮影/張溢文
猫にとって新型コロナウイルスは「脅威ではない」が警戒すべき理由がある。撮影/張溢文

 これまでにとって最も危険と考えられてきた感染症「猫伝染性腹膜炎(FIP)」に、近く「特効薬」が登場する見込みだ。また、猫に新型コロナウイルスがどう影響するかについても、獣医師に取材した。発売中の臨時増刊「NyAERA2021」内「感染症から猫を守る」から抜粋。

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■FIPに「特効薬」が登場する

 FIPとは猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)によって感染、発症すると発熱や食欲不振を経て、腹や胸に水がたまる症状や、肝臓や腎臓などの臓器に肉芽腫を生じさせ、やがて体中が炎症の嵐になって死に至る。

 猫の感染症に詳しい、日本臨床獣医学フォーラム会長の石田卓夫獣医師はこう解説する。

「FIPVは、もともと多くの猫が持つ『猫コロナウイルス』が突然変異したものです」

 猫コロナウイルスとは、新型コロナウイルスとは別で、別名「猫腸コロナウイルス」と呼ばれる。通常は何も病気を起こさないが、変異して血液中に入るとFIPを発症する。このウイルスに体が負ける理由は、集団飼育のストレスや他のウイルスによる免疫低下が引き金との説が有力だ。

「FIPは、3段階を経て起こります。(1)ウイルスが突然変異する(2)免疫低下によりそのウイルスの血液への侵入を許してしまう(3)ウイルスに対するアレルギー反応で免疫が暴走し、致命的な症状を起こします」(石田獣医師)

 FIPには決定的な治療法がなく、症状ごとに抗菌薬やステロイド、インターフェロン製剤が使われてきた。だが、2019年、大きなニュースがあった。

「ギリアド・サイエンシズ社が開発したエボラ出血熱の類似薬を応用するとFIPが治療可能とわかったのです。製品化はされず、私たちは今年1月から別の抗ウイルス薬を使用し国内で独自の治験をスタートしました。新薬の承認には時間がかかりますが、経口投与のサプリメントとしてならもっと早く治療に使えるようになるはずです」(石田獣医師)

■猫にとって新型コロナは脅威ではないが警戒すべき理由
 
 新型コロナウイルスは猫にも感染するらしい――。重症化するのか、肺に炎症が残ったらしい……。

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猫から猫に感染したと思われるケース