弾劾管理人の9人は、トランプ氏が議事堂襲撃を扇動したという証拠として、以下の論点を次々に明らかにしていった。(1)トランプ氏が投開票日の5カ月前から「選挙結果が盗まれる」と繰り返し、支持者を信じ込ませた(2)1月6日のワシントン集合を「えらいことになる」と言って盛り上げた(3)支持者が議事堂に向かう直前の集会で「死に物ぐるいで戦え」といった──ことなどだ。

 このため、投票日にさえ、一部の武装市民が「監視する」として投票所に押しかけた。彼らが、トランプ氏の発言を信じていたからだ。

■共和党7人が有罪判断

 また、議事堂で警察と戦うため、催涙ガスやスタンガン、銃、火炎瓶などを準備していた支持者がいた。前述のビデオでは「3万丁の銃を持ってくればよかった」と仲間に話している支持者の映像さえあった。彼らは、「えらいことになる」というトランプ氏のツイートから、メッセージをくみ、行動を起こす準備を怠らなかった。

「トランプ氏は、長期間にわたり、支持者を愛国者だと褒めて、たきつけてきた。集会を開いて暴力を肯定し、暴力に訴えるように人びとを仕向けたのです」(弾劾管理人、ステイシー・プラスケット下院議員)

 その結果、支持者と警官の計5人が死亡。警官の140人が負傷し、2人が事件後、自死した。その1人は、金属棒でヘルメットとフェースシールドを壊され負傷。米紙ワシントン・ポストによると、別人のようになった彼を妻が励まそうとしたが、出勤途中に自らを銃で撃ったという。

 2月13日、トランプ前大統領が有罪かどうかを問う採決は、賛成57票、反対43票。有罪とするのに必要な上院100議席のうち3分の2以上の賛成には達せず、「無罪」という評決となった。

 しかし、変化は起きた。元大統領指名候補でもあったミット・ロムニー氏など共和党議員7人がトランプ氏は「有罪だ」という判断を下し、過半数を確保した。しかも、無罪を主張すべき共和党からの有罪票が7票も出たというのは、過去最多だった。

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