コロナ禍で、若者たちは何を感じ何を考えているのか。アエラでは、インターネットを通じて10~20代を対象にアンケートを実施した。程度の差はあれ、回答した若者の多くが、「自粛しない若者」のレッテルに違和感を持っていた。

「若者が感染を広げているというのは、コロナ禍の初期に作られた設定なのかなと思うようになりました」

 そう話すのは、慶應義塾大学3年の女子学生だ。若い人に無症状感染が多いことには、もちろん気を付けるべきと考えている。ただ、「自粛しない若者」がテレビやネットで話題になる度に、やるせなさを感じていた。

「どんどん新しい情報が出て、何が許されて何が許されないのかの設定が変わっていく。そう考えるようになってからは、そこまで気にならなくなりました」

 だが、その“設定”の矛先は、たやすく若者へ向く。

 接待を伴う飲食店で立て続けに五つのクラスターが発生した石川県では、2月12日、“「飲食」「若者」感染拡大特別警報”が発令された。同県在住の男性(29)は言う。

「カラオケクラスターが頻発したときには、カラオケや高齢者を名指しした警報は出なかった。また『若者が』と言われる日がくるのかとうんざりしています」

■若者の孤立化進む

 憤りはあるが、若者たちの視点はどこか俯瞰している。アンケートでも、「自粛の線引きは人それぞれだが」「一個人の意見として」などと前置きして、意見を述べる人が目立った。

 客観性の裏側には、生き方が多様化して若者の孤立化が進んだことがあるという。

 立命館大学准教授で社会学者の富永京子さんはこう分析する。

「近年は出自が多様化し、またそれが顕在化したことで、他人と自分は異なるものだという感覚が強まっています。さらに、コロナ禍では集まって相互理解を深めることもできません。自分が何かの代表という意識を持って発言することはますます難しい状況です」

 SNSなどを通じてつながることはできても、1対1以上のコミュニケーションは生まれにくい。互いの利害が見えないため、踏み込んだ話もできない。孤立化はさらに加速する可能性もある。

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