青山学院大学を卒業した女性(25)もキャリアが見通せず、不安を抱えている。

 女性の卒業は、留学したため、昨年9月。卒業時期に合わせて就活に励んだが、売り手市場は買い手市場に激変していた。目指した客室乗務員やメイク業界はコロナ禍の打撃を受け、採用は見送られた。「せめて空港内で働きたい」とアパレルショップに就職。ノルマを伴う激務のため転職を考えているが、志望業界は経験者募集ばかりだ。

「若い頃の方が吸収する力は圧倒的に大きいのに、行動制限で活動範囲が狭くなってしまったことは、今後の人材育成にも影響するように感じています。いつまで我慢していればいいのか、夢だった仕事に就くことができるのか、不安なままです」

■不満は人に伝えて

 大手企業が相次いで早期退職を募集するなど、先行きは不透明なままだ。国や自治体などが行う就職氷河期世代向けの支援も、どれだけの人に届いているのかわからない。

 そんな状況で若い世代が将来を想像するのは至難の業だ。

「若い世代の方には、不満を個人の中にため込まず、人に伝えてほしい。そして社会はその声に耳を傾けなければいけない。過去の若者政策の失敗は、彼らの声に対して社会が適切なセーフティーネットを提供できなかったことにあります」(富永さん)

 一人ひとりの不安感を矮小化せずに吐き出すことで、社会が動く。それが「見返り」にもつながっていく。第二のロスジェネを生まないためにも、上がった声を殺してはいけない。(編集部・福井しほ)

AERA 2021年3月1日号

著者プロフィールを見る
福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

福井しほの記事一覧はこちら