AERA 2021年2月8日号より
AERA 2021年2月8日号より

 外出も運動もせずに飲みすぎ食べ過ぎ。そんなコロナ禍にしがちな生活習慣が、がんになるリスクを高めている。生活習慣の悪化と向き合い、将来の健康のために見直しが必要だ。AERA 2021年2月8日号は「がん」を特集。

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 巣ごもりの健康リスクの一つに、外出が減り、日に当たらなくなったことがある。紫外線には皮膚がんや白内障、肌のしみ、しわをもたらすなどのデメリットもあるが、近年その健康効果が注目されている。

 理由は日光が当たることによって体内で合成される「ビタミンD」にある。脂溶性ビタミンのひとつで、腸管からのカルシウムの吸収を促進し、骨を強くすることがよく知られている。新百合ケ丘総合病院予防医学センター消化器内科部門部長の袴田拓医師はこう話す。

「ビタミンDは免疫を適正化する、つまり弱い場合は強化し、アレルギーのように誤作動を起こしている場合はそれを修正する作用があることがわかってきました」

 免疫はがんの発症にもかかわっている。国立がん研究センターの研究グループは、約3万人を対象に血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクを調べる追跡調査を実施。その結果、血中ビタミンD濃度がもっとも低いグループに対し、それよりも血中ビタミンD濃度が高い三つのグループはすべて、何らかのがんを発症するリスクが低下していた。

 しかし日本人の血中ビタミンD濃度は低く、とくに女性は紫外線を嫌うせいか、基準値(30 ng/ml)に達していない場合が多いという。この傾向はコロナ禍でさらに進んでいるだろうと、袴田医師は危惧する。

「1日15分程度、できれば正午前後に気分転換をかねて外に出てほしい。曇りの日でも効果はあります」

 ビタミンDは、食べ物からとることもできる。シラス、ししゃもなどの内臓ごと食べられる魚やキノコ類はビタミンDが豊富だ。サプリメントでもよい。

 次は食べすぎ、とくに糖質のとりすぎだ。甘い菓子や飲み物、白米、パン、麺類などの糖質のとりすぎが高血糖、糖尿病の発症を招くことは知られているが、糖尿病はがんの発症率も高める。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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