情報収集も多岐にわたる。韓国大統領府にはかつて毎朝、「政治」「軍事」から「文化・芸能」に至るまで計7項目の情報ファイルが届けられていたという。筆者も日本の首相官邸詰めだった時期、国情院の情報班要員から、小泉純一郎首相(当時)が過去に付き合っていた女性の情報について質問を受けたことがある。

 女性スキャンダルの場合、韓国人が対象のときは単なる情報収集ではなく、ハニートラップを積極的に仕掛ける工作を行うことがある。国情院関係者から昔聞いた話では、時の政権に不利な国会質問を繰り返す野党議員に女性を近づけた。情事の動かぬ証拠を議員に突きつけ、政権攻撃をやめさせたという。

 ただ、日本を含む外国人を対象にするときは、摩擦を極力避けるためなのか、とりあえず、情報収集だけにとどめるという。関係者は「政治的な取引が必要になったときに使うために取っておく」と語る。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)

※【日本でも暗躍する韓国情報機関 訪日中の金大中氏拉致事件、日本の新聞社のメールをハッキングも】へ続く

AERA 2021年2月1日号より抜粋