Emmanuelle Devos/1964年、フランス生まれ。舞台俳優として活躍したのち、アルノー・デプレシャン監督作「そして僕は恋をする」(96年)でセザール賞有望若手女優賞にノミネートされる。その後、「リード・マイ・リップス」(2001年)でセザール賞主演女優賞を受賞。そのほかの代表作に「キングス&クイーン」(04年)など(写真:アット エンタテインメント提供)
Emmanuelle Devos/1964年、フランス生まれ。舞台俳優として活躍したのち、アルノー・デプレシャン監督作「そして僕は恋をする」(96年)でセザール賞有望若手女優賞にノミネートされる。その後、「リード・マイ・リップス」(2001年)でセザール賞主演女優賞を受賞。そのほかの代表作に「キングス&クイーン」(04年)など(写真:アット エンタテインメント提供)
「パリの調香師 しあわせの香りを探して」/偶然出会った天才調香師と専属運転手は、次第にお互いを補い合う存在となる。1月15日から全国順次公開 (c)LES FILMS VELVET-FRANCE 3 CINEMA
「パリの調香師 しあわせの香りを探して」/偶然出会った天才調香師と専属運転手は、次第にお互いを補い合う存在となる。1月15日から全国順次公開 (c)LES FILMS VELVET-FRANCE 3 CINEMA
「メニルモンタン 2つの秋と3つの冬」/発売元:東風+gnome、販売元:ポニーキャニオン、価格3800円+税/DVD発売中 (c)ENVIE DE TEMPETE PRODUCTIONS2013
「メニルモンタン 2つの秋と3つの冬」/発売元:東風+gnome、販売元:ポニーキャニオン、価格3800円+税/DVD発売中 (c)ENVIE DE TEMPETE PRODUCTIONS2013

 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【映画「パリの調香師 しあわせの香りを探して」の場面カットはこちら】

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「脚本を読んだときに、『この役をオファーされたのは偶然ではないな』と感じた。出演するかどうか決めるには、脚本を3、4ページ読めば十分。香水と同じで、嗅覚で感じとる、ということなのかもしれない」

「パリの調香師 しあわせの香りを探して」に主演するエマニュエル・ドゥヴォスは、初めて同作品の脚本に目を通した時の感覚をそう表現する。

 ドゥヴォス演じるアンヌは、高級メゾンの調香師として活躍するも、現在は生活用品の香りをつくる仕事に従事している。ある日、アンヌは専属運転手としてシングルファーザーのギヨームを雇ったことから、人生が動きだす。

「作品のなかで、二人が安易に恋愛関係にならないのがいいなと思った。それって意外と珍しいことだから」

 そうドゥヴォスが言う通り、仕事に対する葛藤、そして他人との出会いが人生に思わぬ影響を及ぼしていくことの面白さが丁寧に描かれる。アンヌは、周囲に自分を合わせていくことに難しさを感じていて、その場を取り繕おうとしても心がついていかない。そんなキャラクターを、ドゥヴォスは他人事に思えなかったのだという。

 アンヌを演じるにあたり、エルメスの専属調香師からアドバイスを受けた。一流調香師になると、1500もの香りをかぎ分け記憶できると知り、驚かされたという。

「植物の名前も覚えなければいけないし、香りの名称のなかにはラテン語がベースになっているものもある。インスピレーションを得るためには、好奇心旺盛でいなければいけないし、たとえば日本のように地理的に遠い国のことも知らなければいけない。幅広い知識と教養が必要な仕事なんだと改めて感じた」

 ドゥヴォスといえば、どこか気怠さをまとった「声」が特徴で、個性的なキャラクターに息を吹き込み、作品に深みを与えてきた。そんな彼女の声は、この作品のなかでも強い印象を残す。たとえば、ギヨームがインターホン越しに初めてアンヌと言葉を交わすシーンは、彼女の声の魅力が観客の想像力をかき立てる。

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