「もはやエンタメは、ファンダムの存在抜きには語れないものになりつつあります」

 こう話すのは日本や韓国のポップカルチャーに詳しい評論家のさやわかさん(46)だ。

「ファンダムとは、アーティストやアイドル、アニメ・漫画・ゲームといったコンテンツの熱狂的なファンたち、そしてファンたちによって生み出される文化などを示す言葉です。聞き慣れない人もいるかもしれませんが、この言葉自体は何十年も前からあって、欧米ではSF作品やスポーツのファンなどに対して使われてきました」

■「育つ過程」の目撃者

 日本でそのファンダムが新しい形として可視化されたのは、16年のSMAP解散のときだろう。ファンたちがSMAPへの思いを伝えるべく、クラウドファンディングで資金を募り、朝日新聞の全面広告8面をジャックした。かつてはファンの熱狂の発露は個々人がファンレターを送るくらいだったかもしれない。それが、SNSやクラウドファンディングなどを使うことで、集まる資金や人的資源、企画力が拡大し、社会に大きなインパクトを与える現象を起こすまでになっている。

 作品自体がその動きを取り入れて作られるという流れも出ている。最たるものは、アニメ映画で開催される“応援上映”。ファンたちが応援しながら見るというこの上映方法を前提に作られたアニメ「KING OF PRISM by PrettyRhythm」(16年)の異例のロングランは、ファンダムの機運の高まりを示す象徴的な出来事だった。

 そして、そのファンダムがさらに進化した形となって今、日本にも根づこうとしている。さやわかさんによると、日本でファンダムが注目されるようになったのは、近年の第4次韓流ブームがきっかけだという。K‐POPグループのBTSや、Netflixの配信ドラマ「愛の不時着」や「梨泰院クラス」など韓国発のコンテンツが日本でも大ヒットを飛ばしているが、作品だけでなく、ファンダムの先進地である韓国の応援文化も同時に入り込んできた。その行動力と影響力、規模は驚くべきだ。

「“オタク”の場合、グッズを集めるだけの人も含みますが、“ファンダム”は『自主的な行動をとる人たち』という意味合いになる。JO1の“JAM”は日本で、いま最も活発な動きをしているファンダム。BTSのファンダム“ARMY”のように、ファン同士で結束して推しメンの応援広告を出すなど、日本になかった活動を展開しています」(さやわかさん)

次のページ