■親も子もウィンウィン

 同アカデミーの福田祥子さんは、こう見る。

「これまでキャッシュレス賛成派が30%台だったのに対し、今年は大きく増加しました。なかでも20代は7割、30代は6割が好意的にとらえています。帰省控えや非接触で渡せることが後押しとなっているようです」

 キャッシュレス化がもたらすのは、感染リスクの減少だけではない。前出の20代女性はこうも答える。

「新札やポチ袋を用意したり、直接手渡しする手間も省ける。お互いウィンウィンです」

 女性が言うように、現金を渡す以上に、形式を面倒に感じることも多かったお年玉。もらう側とあげる側の双方にキャッシュレス化は合理的ともいえなくもない。だが、もちろん、受け入れられないという声もある。

 懸念は、子どもたちの「お金観」の変化だ。単なる「数字」のやりとりでは、お金の実体をつかめないのではないか──。

 だが、それはキャッシュレスに限ったことではない。前出の福田さんは指摘する。

「大切なのは、お金の概念を身につけているかどうかです。数字の変化としか捉えられない子どもには、お金は有限であることを理解させる。計画的に物を買ったりお金を貯めたりできるようになることが重要です」

 現金でもキャッシュレスでも、上手に使えるようになればそれでいい──頭ではそうわかっていてもどこか腑に落ちない。大阪府に住む女性(61)が言う。

「ポチ袋に『勉強を頑張るように』とか『親の手伝いをするように』といった一言を書くのも楽しみの一つでした。でも、ナントカペイでは渡しがいもないし、もらう側のありがたみもないのでは」

 キャッシュレス送金でも、メッセージを添えることはできる。それでも、ポチ袋のほうが温もりとありがたみを感じる。だが、当の子どもにとっては、もらえることが「一番ありがたい」に変わりない。(編集部・福井しほ)

AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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