AERA 2020年11月23日号より
AERA 2020年11月23日号より
医療体制整備も各地で進む。神戸市立医療センター中央市民病院に11月完成した新型コロナの臨時病棟 (c)朝日新聞社
医療体制整備も各地で進む。神戸市立医療センター中央市民病院に11月完成した新型コロナの臨時病棟 (c)朝日新聞社

 米製薬企業大手ファイザーは、開発中のワクチンに90%以上の有効性がみられたと発表した。だが、効果や安全性の面では引き続き検証が必要だ。AERA 2020年11月23日号から。

【写真】神戸市立医療センター中央市民病院に11月完成した新型コロナの臨時病棟

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 米製薬企業ファイザーは11月9日、新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験(治験)の最終段階で、「90%以上の有効性があった」と中間報告を発表した。

 同社は独バイオベンチャー、ビオンテックとこのワクチンを開発。3段階ある治験のうち、最終段階である「第3相試験」を、7月下旬から米国やドイツ、南アフリカ、ブラジルなどの150カ所以上の医療機関で実施している。8日までに登録された参加者は12歳から85歳の4万3538人。無作為に2グループに分け、ワクチンかプラセボ(偽薬)を2回ずつ投与する。

 第三者によるデータモニタリング委員会が8日までにワクチンか偽薬を2回投与された3万8955人を解析したところ、94人が新型コロナウイルスに感染していた。94人がワクチンと偽薬のどちらを投与されたのかを比較した結果、ワクチンには90%以上の有効性があるという解析結果になった。重い副反応は起きていないという。

 解析の詳細は公表されていないが、ワクチンの治験では通常、90%の有効性があるという場合には、ワクチンを投与された人の感染が偽薬の人より90%少なかったことを意味する。

 この結果に対し、ワクチン開発に詳しい東京大学医科学研究所の石井健教授は一定の評価をする。

「中間報告で詳細は不明な点がまだ多いとはいえ、90%の有効性が確認されたということは、素晴らしいニュースだ」

■ワクチンの製造開始

 ワクチンの治験は接種後も長期間、効果や安全性などを検証するために何年もかかる。しかし、各国には、パンデミックのような緊急時に、治験が終了していない途中の段階でも安全性や効果がある程度確認されれば、使用を許可する仕組みがある。

 ファイザーとビオンテックは11月の第3週にも米食品医薬品局(FDA)に対し、緊急時の使用許可を申請する。早ければ年内に許可が下りる可能性がある。両社はすでに製造を始めており、年内に5千万回分、2021年には13億回分を提供できるとしている。

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