アメリカ南部ではトランプ支持のサインが多く見られる(写真/筆者提供)
アメリカ南部ではトランプ支持のサインが多く見られる(写真/筆者提供)

 バイデン当選が確実になった2020年アメリカ大統領選。トランプは未だいくつかの州に再集計を要求しており、12月8日までは調査が続けられるとのことです。結果がひっくり返る確率は限りなく低そうですが、今も逐一チェックしているかたが多いのでは。私も一アメリカ在住者として、選挙権はありませんが固唾を呑んで行方を見守っているところです。

【写真】トランプ氏を痛烈批判した元側近

 
 11月3日火曜の選挙日、私の娘が通う学校は投票所であるという理由で休みになりました。学校からは「市民の自由、権利、責任について子どもと語らう絶好の機会です。ぜひ選挙の過程にできるだけ子どもを参加させてください」とメールが来ました。我が家の4歳と1歳に伝わるかどうかはわかりませんでしたが、我が家唯一の有権者である夫を投票所へ送っていくときに、「ダディはこれからアメリカのリーダーを決めに行くんだよ」と話しました。投票所には長蛇の列ができており(3時間半待ち!)、子どもや赤ちゃんを連れている人も見かけました。

 子どもに親の背中を見せるだけではなく、子育て層の声を届かせるためにも、選挙は重大な意味を持っています。子どもをもつ親としてどう選挙に臨んだか、複数の友人に話を聞いてみました。

 4歳の男の子を持つ民主党支持の友人は、こう語りました。

「4年前のあの日、トランプ当確のニュースを聞きながら涙が頬を伝って止まらなかった。当時私の息子はまだ生後7カ月だったけれど、いつか彼に『あなたの大統領は優しさも威厳も何一つ持ち合わせていない人間なのよ』って教えなきゃいけない日が来ると考えたら、想像するだけで恐ろしくなったの。息子には新時代を生きる健やかな男らしさを持ってほしいと常々思っているけれど、トランプときたら、男らしさの中でも最も邪悪で毒性のある部分を煮詰めたような存在なんだもの。この4年間は、彼の言動に辟易し、アメリカ市民として恥じ入るストレスフルな毎日だった。でも、やっと世界に誇れる次期大統領が選ばれたの。バイデンだってもちろん完璧ではないでしょうけど、誠実さと思いやりを持った、子どもが憧れることのできる人物。息子に胸を張ってバイデン当確を知らせることができて、本当にうれしかった」

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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