それでもこの期間、落ち込んだり泣いたりすることは一度もなかったという。

「起こったことは、わりとそのまま受け入れるタイプです」

 起こったことは起こったこと──。現実に対して、はたから見ればある種「諦観」するようになった原点は、中学2年のときの母の死ではないかと自己分析する。母にがんが見つかったときには手遅れの状態で、死後は、日々の食事作りや買い物など家事全般は真美さんが担当。自分の時間はほとんどなかった。

「嘆いても過去が変えられるわけじゃないし、受け止めた上で最善の方策を考えるほうがいい」

 ルワンダでは、予想外のトラブルは日常茶飯事だったが、「彼らなりの事情がある」と思うと、それほどストレスにならなかった。日本での緊急事態宣言期間に、家族が家にいることをストレスに感じている人が多いというニュースを見て「先進国の人間は弱い」と感じた。

「26年前に大虐殺があったルワンダで、悲劇から立ち直ろうと必死に、したたかに生きている人たちを見てきましたから」

 ルワンダに戻った真美さんは、10月中旬、義足や義手を必要としている障害者たちのために、拠点の再建が必要だと再確認し、まず600万円を目標に、クラウドファンディングを始めた。

「ルワンダには虐殺に巻き込まれて手足を失った人がたくさんいます。彼らと共に、前に進んでいきたい」

(編集部・中原一歩、深澤友紀)

AERA 2020年11月16日号より抜粋