お金では埋められないやるせなさを感じることもある。12月は「一番嫌いな季節」だ。誰もが「家族」を意識する年末年始をどうやり過ごすかが毎年の悩みだ。家族を持つことに抵抗があり、自分がその側になる決断はなかなかできない。

 自分はワンルームの賃貸に暮らすが、投資の配当で得た現金で一軒家を購入し、シェアハウスにした。収入が少ない同僚や友人に、相場より割安の価格で貸し出している。

「誰かに喜んでもらえることが、自分の悦び。自分の境遇を考えると、どんなことがあってもまず動揺はしない。物やお金にこだわりはないので気持ちの上では楽に暮らせています」

■現実を受け入れて最善を目指す

 ルダシングワ真美さん(57)と夫ガテラさん(65)は、ルワンダを拠点に、のべ1万人以上の義肢装具・杖・車いすなどを無償提供してきた。その活動の拠点がルワンダ政府によって突然壊されたのは、今年2月のことだ。

 二人は政府から寄贈された土地に、約20年かけて義肢製作所や活動資金を得るためのレストラン、ゲストハウスなどを建て、現地で義肢装具士も育成するなど活動を続けていた。ただ、この地域はたびたび洪水の被害を受けていて、数日中に再び大雨の予報が出たため、立ち退きを命じられた。「すぐには無理だ」と断ると、翌日にはショベルカーがやってきたのだ。

「荷物をどこに運びだすか、そのためのトラックをどこから手配し、運ぶ人を何人雇おうか……。やらなくてはいけないことが頭に浮かび、動くしかない状況で、悲観する暇はありませんでした。もし動かずにいたらますます不安は大きくなり、次に立ち上がるときにかなりエネルギーが必要だったでしょう」

 強制撤去の翌月、義肢製作所の再建資金を集めるために、日本に一時帰国した。だが、予定していた約100件の講演やイベントは、新型コロナウイルスの影響で次々に中止になった。新型コロナや相次ぐ自然災害で経済的に厳しい人も増えた中で、「支援して」とは言いづらかった。

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