※写真はイメージ(gettyimages)
※写真はイメージ(gettyimages)
AERA 2020年11月2日号より
AERA 2020年11月2日号より

 教員による児童生徒への性犯罪が後を絶たない。背景には刑罰の軽さがある。再犯率が高いにもかかわらず、逮捕後も教育職員免許の再取得や別の自治体で再就職も可能だ。AERA 2020年11月2日号から。

【グラフ】わいせつ行為で処分された公立校の教員の数

*  *  *

「少し触られたくらいでそこまで騒ぐのかという人がいますが、子どもにとって身体を触られたり、わいせつな目で見られたりすること自体が『性暴力』です」

 と話すのは、教員による性暴力などを受けた子どもを持つ保護者らでつくる「全国学校ハラスメント被害者連絡会」共同代表の郡司真子さん。

 同連絡会は9月に「教員による子どもへの性犯罪被害調査」を実施すると40、50代を中心に約50人から回答があった。調査は今も継続中だが中間結果(複数回答)によれば、性犯罪被害に遭った年齢は「小学校中学年(3、4年生)」が最も多く25%、次いで「小学校高学年(5、6年生)」21%、「中学生」17%の順となった。

 被害に遭った場所は、「通っている(通っていた)学校の教室」が42%で最多。教員からされたことでは、「身体を触られた」が24%でもっとも多く、「頭や頬を触ってきた」(12%)、「下着の中に手を入れて触ってきた」(10%)という答えが目立った。

信頼できるはずの教員からの性暴力は、子どもたちの心身に深刻な傷を残す。

■別の自治体で採用試験

「娘はフラッシュバックに苦しめられ、学校にも行けなくなりました」

 東京都千代田区に住む母親(51)は、苦しい胸の内を明かす。長女(14)が区立小学校の5年生だった3年前、30代の担任の男性教員からセクハラ行為を受けた。

 母親によれば、この教員は4月から長女の担任になると、長女の頬やおでこを指でつついたり、「かわいいね」などと言ったりしてきた。「気持ち悪い」と感じた長女は神経性胃炎になり、PTSDを発症。そして心身を壊し、2度の自殺未遂も図った。別の小学校に転校し私立の中学に進んだが、教員に触られた時の場面がフラッシュバックし、つらくて不登校になっているという。

 昨年6月、母親は長女が性的羞恥心による精神的苦痛を受けたとして、千代田区と長女が通っていた小学校の校長や担任らを相手に提訴した。だが、裁判で区や教員側は、「その場の雰囲気を和ませるために『かわいい』と言っただけで、性的意味はなかった」などと反論しているという。母親は力を込める。

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら
次のページ